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社説(1月14日)中国ビザ発給停止 国際協調に背向けるな

 新型コロナウイルスを克服する国際協調に背を向ける愚策と断ぜざるを得ない。中国政府が日本と韓国からの渡航者に対するビザ(査証)の発給を一方的に停止した。第三国に向かう乗り継ぎ時の一時入国を認める優遇政策も停止した。
 中国外務省報道官は、国家間の正常な往来や協力の環境を維持するための対等な措置と説明し、「完全に正当で合理的だ」と主張する。だが、日本政府は中国人の訪日ビザを制限しておらず、中国側が対抗措置だとする論拠は薄弱だ。習近平国家主席は「ゼロコロナ政策」をやめ、入国者への水際対策を撤廃したばかり。他国での中国人に対する対策強化は、国内向けに成果をアピールしたい習主席に痛手だ。対抗策の実態は、習政権がメンツをつぶされたと考えたためだろう。
 なぜ、日本が中国からの来訪者に対する対策を強化したのか。中国では感染爆発が起きているとみられ、世界保健機関(WHO)が政府発表の感染者数が実態とかけ離れ「過小評価されている」と指摘しているからだ。日本政府が中国本土からの来訪者全てを対象に陰性証明の提示とウイルス検査を義務付けたのは適切な判断だ。
 静岡県内には中国国内の生産拠点と密接なメーカーが多く、影響が気がかりだ。中国によるビザ発給停止が長引けば企業活動に影響が生じる恐れがある。折しも、全便欠航となっていた静岡空港の国際線定期便で3年ぶりに韓国ソウル線の運航再開が決まった。今年は静岡空港の国際線の主軸である日中韓の往来正常化が期待される。
 中国のゼロコロナ政策は3年に及んだ。解除は国民の自由と権利を尊重することにつながり、歓迎すべき政策判断と言える。日中の政府間交渉の行方は不透明だが、コロナ後を見据えた地方都市の交流は両国の懸案であることに変わりない。こういう状況だからこそ、本県は往来が正常化する時期を見通し、友好提携を結ぶ浙江省や中国の航空会社との協議を強化すべきだ。
 コロナ感染とその治療に関し、世界各国で適切な診断と対処方法が確立し、ワクチンや治療薬の開発が進展している。ゼロコロナからの離脱段階で起きた中国国内での感染急拡大は、その詳細な情報を各国の研究者が共有すれば、コロナ禍を克服する対策構築の有用なデータになるだろう。
 習主席は新年のあいさつで「夜明けの光はすぐそこだ」と述べた。だが、多国間のサプライチェーン(供給網)の一翼を担う大国が、国際協調を無視したウィズコロナ政策に突き進んでもいずれ限界に突き当たる。

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