リニアトンネル工事 国「論点案」に意見 静岡県の生物多様性専門部会「沢カルテ」など議論
リニア中央新幹線南アルプストンネル工事を巡り、静岡県は12日、大井川上流域の動植物への影響を検討する県有識者会議生物多様性専門部会を県庁で開いた。開催は約10カ月ぶり。昨年12月に国土交通省専門家会議が示した、生物多様性への影響の検討に向けた3項目の「論点案」の問題点を指摘した。県は県専門部会として総意をまとめ、国の専門家会議に提出する方針。
トンネル工事で地下水位が低下した場合に懸念される上流部の沢の減水を巡り、沢ごとの減水予測や対策を記す「沢カルテ」を作成するとしたJR東海の案に、一部の委員からは調査方法への疑問や提案が挙がった。
加茂将史委員(産業技術総合研究所主任研究員)は「生態系の完全な理解は困難。簡単な指標をつくり、数をこなす方法を考えた方がいい」と提案した。一方、板井隆彦部会長(静岡淡水魚研究会長)は、上流部の沢を類型化して一部の地点を調査するJR案に「地下水位低下の影響が均等に起こるわけではない」と慎重な姿勢を示した。村上正志委員(千葉大大学院教授)は管理値の設定に地元住民の視点を取り入れ、影響を受ける可能性が高い生物を指標種とする案を示した。
岸本年郎委員(ふじのくに地球環境史ミュージアム学芸課長兼教授)は「生態系への影響の回避、低減が前提だが、回避できそうにない問題はある」とし、国の専門家会議で補償や代償措置を議論する必要性を指摘した。