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解熱剤、せき止め…処方薬が不足 供給低迷に加え、新型コロナ「第8波」で需要増 静岡県内

 新型コロナウイルス「第8波」で、解熱鎮痛剤などの処方薬が不足している。医薬品メーカーの不祥事により慢性的な供給低迷が続く中、感染増加で需要が増えているためだ。薬局で納品遅れが生じ、医療機関や発熱外来はやりくりに苦心している。一方で市販薬は比較的余裕があるという。県は23日に「医療逼迫(ひっぱく)警報」を発令し、「自宅療養で済むよう備えてほしい」と呼びかける。

処方薬の不足が続く中、関係者は「市販薬の備えを」と呼びかける=12月中旬、静岡市駿河区
処方薬の不足が続く中、関係者は「市販薬の備えを」と呼びかける=12月中旬、静岡市駿河区


県「市販で自宅療養備え」
 「(処方薬の)解熱剤やせき止め、漢方薬が足りない」
 静岡市駿河区の「石川薬局」の石川幸伸社長(66)が現状を説明する。薬の発注は1日2回あり、以前は早ければ当日中に届いた。今はネット上の注文書に「欠品」の文字が記され、注文すらできない場合がある。コロナもインフルエンザも急増すれば「対応が追いつかなくなるのは目に見えている」と危惧する。
 同市静岡医師会副会長で小児科医の河原秀俊医師(60)は解熱鎮痛剤の中でも小児が使用する細粒の入荷が厳しいと指摘。「門前薬局と連絡を密に取りながら処方量を調整し、何とかやっている」と話す。
 焼津市医師会と同市が年末年始に開設予定の発熱専門診療センターは薬の調達にめどが立たず、実施が危ぶまれた。
 同施設は市内に30日から5日間開設し、360人の患者を見込む。ところが卸業者に発注しても希望通り納品できないことが判明。一時は断念も検討されたが、行政と医師会、薬剤師会が協議し、状況に応じて市内の各薬局にある在庫を融通することで何とかまとまった。市健康づくり課の池谷智子課長は「想定外。協力機関なしに実施は不可能だった」と語る。
 今後インフルエンザも流行し、処方薬不足に受診の殺到が重なれば医療現場は混乱しかねない。石川社長は「市販薬の供給動向も注視する必要はあるが、いつも買う薬局や商品にこだわらなければ入手できる。焦らず適正な量を各家庭で備蓄してほしい」と求めた。

国、調整に着手 実効性に疑問符も
 処方薬の不足を巡り、厚生労働省は「解熱鎮痛剤等の安定供給における窓口」を設置した。薬剤が足りない医療機関や薬局に行き届くよう調整を図る。
 14日付で都道府県などに発出された通知によると、医療機関や薬局がアセトアミノフェンやイブプロフェンなどの必要量を専用フォームに記入し、国に直接メールで送信する。国は卸業者に納入調整を依頼する。
 県内の関係者からは事態改善に期待する声が聞かれる。一方で、「医薬品メーカーが出荷制限をかけている状況は変わらず、パイを取り合うだけ」と実効性に懐疑的な向きもある。

 <メモ>2020年以降、ジェネリック医薬品(後発薬)メーカーの不祥事や不正製造が相次いで発覚。業務停止命令などの影響が続き、日本製薬団体連合会は今月初旬、今年8月末時点で4千品目超、医薬品全体の3割近くで出荷制限や出荷停止が行われたと発表した。

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