社説(12月18日)浜松「医工連携」大 足踏み状態でいいのか
東京医科歯科大と東京工業大は統合して一つの大学になることに合意し、医療系、理工系のトップレベルの国立大がタッグを組む「医工連携」大学が2024年度にも誕生する。
浜松医科大と静岡大も19年に合意した法人統合・大学再編計画で浜松地区には医工連携大を開設し、本年度から学生を受け入れる目標を掲げていた。だが、大学再編には静大静岡キャンパス側の反対が根強く、計画は延期となっている。先を越された形となった。
医科歯科大と東工大は大学統合で、政府が創設した10兆円規模の基金の支援が受けられる「国際卓越研究大学」の認定を目指す。これまで以上に有能な学生の獲得に優位に働くだろう。浜医大と静大浜松キャンパスの工学部、情報学部が融合する医工連携大には別の強みがある。地元の企業、金融機関や行政が開設を歓迎し、支援体制の構築を進めている。
最新技術を取り入れた医療機器や治療法の開発、こうした技術を医療に応用できる人材の育成は時代の要請でもある。医工連携大はその中核となる。足踏みしたままでいいのか。
既に両大は18年にレーザーやセンサーなど光技術と医療の両分野に精通した人材を養成する共同大学院「光医工学共同専攻」を設置している。静大工学部出身者らが設立した浜松ホトニクスも協力を惜しまない。ニュートリノ検出の光電子増倍管を開発し、ノーベル賞受賞を支えた技術者の存在はアピールできる。国内だけでなく海外からも意欲的な若者が集まってくる可能性を秘める。
再編協議は宙に浮いているものの、浜医大は静大浜松キャンパスとの連携を強めている。データや人工知能(AI)を活用した医療分野の新技術や機器の開発、起業家精神に富んだ学生や若手研究者の育成を目指す「次世代創造医工情報教育センター」も本年度学内に開設した。
静大側は浜松キャンパスが切り離されると総合大学としての規模が縮小されるなどと反対の声が強い。日詰一幸学長は、浜松側の大学再編関係者に両大を統合する1運営法人・1大学の私案を提示した。静大側も医・工・情報の連携の必要性は認めている。
文部科学省は、少子化を背景に大学の統合や連携を促している。国公立、私立問わず各大学は「選ばれる大学」を目指し、模索している。両大には選ぶ側の受験生の視点を第一に、大学のあるべき姿を改めて考えてほしい。ただ、悠長に構えてはいられない。少子化は加速している。