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社説(12月6日)J3沼津体制一新 目指すチーム像掲げよ

 沼津市をホームとするサッカーJリーグ3部(J3)アスルクラロ沼津の体制が一新される。近年は成績が低迷して観客動員も伸び悩み、本拠地の照明問題でJリーグライセンス取り消しの危機に見舞われるなど閉塞[へいそく]感に覆われた状態だった。来季は現場とフロントのトップのほか、クラブの運営会社の筆頭株主が交代する。雰囲気を一変させ、ファンと市民に対し改めて目指すべきチーム像を掲げてほしい。
 監督には“ゴン”の愛称で知られるチームOBの中山雅史氏が就任する。全国区の知名度から注目を集めるのは間違いない。明るいキャラクターもあり、選手の士気向上を期待したい。ファンの間ではこの数年、閉鎖的な空気を感じていたとの声があり、憶せずプレーできる環境を整えてほしい。
 フロントトップと、運営会社「アスルクラロスルガ」の筆頭株主にはサッカーに理解と知見を有する人材が就く。強いチームの特徴は全員が同じ目標を持ち、共有していること。現場と合わせ三位一体となったチームづくりが見込めそうだ。
 新社長にはJ1鹿島アントラーズで指導歴がある高島雄大氏が選ばれた。大手銀行での勤務を経てJリーグ初年の1993年に鹿島入りし、事業や運営、育成の各部門の部長を務めるなどフロントを支えた。チームの地元茨城県サッカー協会の運営にも関わり、鹿島でJリーグ理念の「地域密着」を実現させた。沼津の飛躍には真の市民球団となることが欠かせない。手腕を発揮してもらいたい。
 筆頭株主は都内の不動産会社三ツ星不動産サービス社長の谷強氏となり、運営会社の会長に決まった。同社はJ3のYSCC横浜のスポンサーで株主でもあり、選手の海外移籍と留学に関するコンサルタントなど多角的にサッカーに関わっている。財政基盤の安定と選手の育成に期待したい。
 ただ、沼津を取り巻く環境は依然厳しい。本拠地の設備はJ2仕様としては未整備の箇所が多く、行政との調整が急務だ。高島氏は1日の記者会見で2025年のJ2昇格を目標に掲げ、環境整備を進める考えを示した。選手の士気を上げるためにも待遇と環境両面の改善を進めてほしい。債務超過の収益面では、まずはチームのビジョンを明確にして行政と経済界との信頼醸成に努め、支援を求めるのが筋だ。
 現場の改革も待ったなし。夏にはコロナ禍の中、スタッフらが多人数で懇親会を開き処分を受けた。プロ意識の欠如と指摘される問題を繰り返してはならない。

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