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テーマ : 社説

社説(11月30日)自転車の安全対策 法の軽視、規制強化招く

 ルールを守らない悪質な自転車の取り締まり強化を警察庁が全国に指示した。自転車は老若男女が愛用する便利な移動手段だが、公道では「軽車両」として道交法の網がかかる。全国の違反摘発は2015年に1万件を突破した。増加傾向が続き、21年は2万1千件を超えた。
 警察が取り締まりを強化している違反は「信号無視」「一時不停止」「右側通行」「徐行せずに歩道を通行」の4項目。警告で済ませることが多かったが、悪質な違反には講習の義務付けや刑事処罰の対象となる交通切符(赤切符)を積極的に交付する。
 ルールを軽視する人が増え、被害が重大化すると法律の規制が強化される。すると、改正法に基づく摘発や指導が強まり、ルールも細分化されていく。自転車を巡る道交法改正の動きもこの例外ではない。生活に密着した軽快な乗り物としての自由度が狭まる規制強化は、多くの国民が望まないだろう。自転車の重大事故を抑止するため、改めて、法令順守と運転マナーの向上を図りたい。
 安全対策の強化で、今年4月に改正された道交法に自転車乗車中のヘルメット着用の努力義務が盛り込まれた。1年以内に施行される。静岡県内で今年発生した自転車が絡む人身事故は11月28日現在で2606件。7人が死亡した。静岡県警は学校や地域で講習会を開催するなど、安全運転の指導を活発化させている。
 静岡県は通勤、通学を軸に都市部で自転車利用が活発だ。4項目の中で警視庁が重視する「徐行せず-」の違反は県内でも散見される。歩道でスピードを出せば歩行者が事故に巻き込まれる危険が高まる。一時不停止や信号無視は運転者に重大な危険が及ぶ。
 電動アシスト機能付き自転車は脚力が低下した人や子育て世代に人気で、経済産業省によると09年に約31万台だった販売台数は10年で倍増した。ただ、電動自転車に子ども用の乗車装置を備えて親子で乗ると、総重量が100キロを超すことがあり、人身事故が起きると重傷化を招きやすい。
 次世代モビリティー(移動手段)の開発は活発化し、電動キックボードは2年以内に施行される改正道交法で16歳以上が免許なしで乗ることができるようになる。乗り物の進化に応じた通行帯の整備やルールの周知は自治体や警察が取り組むべき喫緊の課題と言える。学校教育が果たす役割もある。軽車両を巡る交通環境の改善は国民の生活の質の維持向上に密接で、関係機関が総力を挙げ、多様な観点で取り組む必要がある。

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