あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 裁判しずおか

同性婚選択できる日を 損賠訴訟、30日東京地裁で判決 昨年まで熱海居住の原告

 同性同士の結婚を国が認めないのは婚姻の自由の侵害だとして、東京都などの8人が国に損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、東京地裁で言い渡される。2021年12月まで熱海市に住んでいた原告の広橋正さん(53)とかつさん(37)=仮名=カップルは「性的指向で平等な権利が与えられないのは明らかに不平等。同性婚を選択できる日が一日でも早く来てほしい」と司法の判断に期待する。

東京地裁
東京地裁

 2人は十数年前に会員制交流サイト(SNS)で知り合った。東京都と熱海市で約10年間同居し、現在は沖縄県に移り住んで宿泊業を始める準備を進めている。異性婚カップルと変わらない生活を送るが、婚姻が認められないことで気掛かりな点もあるという。
 以前、かつさんが甲状腺異常の疑いで検査を受けた際、病院に付き添った広橋さんは「法律上は他人の自分が結果を聞けるのか」と心配になった。その場は同席を許されたが、原告カップルの中には病院にパートナーの病状説明を拒まれたケースもあり、16歳差の2人には不安が残る。ほかにも相続権や所得税の配偶者控除、共同親権など法律婚で得られる権利や利益が認められていない。2人は「国は守ってくれない。薄氷の上を歩いているようだ」と声を詰まらせる。
 物心付いた頃から好意の対象が男性だった広橋さん。周囲に嫌われるのを恐れ、隠して生きてきた。会社の同僚や母親から恋人の存在を聞かれた際は、パートナーの男性を“彼女”に置き換えて話を合わせた。
 最近は社会の理解が徐々に広がっていることを実感する一方で、依然として性的少数者に対する差別的な言動があり、胸を痛めている。生きづらさの根元にある差別や偏見は「法の下の平等が認められることで変わっていく」。2人はこう信じている。

憲法24条「婚姻の自由」 14条「法の下の平等」争点
 同性同士の結婚の自由を巡る東京地裁の訴訟は、国が民法や戸籍法の規定を理由に同性婚を認めないことが、憲法24条の「婚姻の自由」や14条の「法の下の平等」に違反するかが争点になっている。
 民法や戸籍法では婚姻に関して、男女の組み合わせを想定した「夫婦」という文言が使われ、男女間に限ると解釈されている。
 原告側は「婚姻には個人の幸福追求の意義があり、同性カップルにも当てはまる」として、同性婚の自由は24条で保障されていると主張。同性婚を認めないのは、14条に照らして「性的指向や性別による不合理な差別だ」と訴える。
 一方、国側は24条の「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」との条文を踏まえ、「同性婚を想定していない」と反論する。憲法は異性婚と同性婚に差が生じるのを容認していて「14条の平等原則に反する余地はない」としている。
 同性婚を巡る訴訟の判決は東京地裁で全国3例目。昨年3月の札幌地裁判決は、24条との関係では「制度制定を保障したものではない」と違憲性を否定したが、「同性愛者に婚姻の法的効果の一部も享受させないのは、差別的取り扱いだ」と14条に反すると初めて判断した。
 今年6月の大阪地裁判決では24条、14条のいずれに照らしても合憲とした。

▶ 追っかけ通知メールを受信する

裁判しずおかの記事一覧

他の追っかけを読む