あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 社説

社説(11月29日)COP27基金合意 先進国は責任の自覚を

 エジプトで開かれた国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)は、気候変動で発展途上国に生じた被害に対する支援基金を設立することに合意して閉幕した。
 人為的な気候変動によって人命や財産、生態系などが失われたり深刻な被害を受けたりする「損失と被害」への支援を目的とし、長年にわたって基金設立を要望してきた途上国にとっては大きな成果となった。支援対象となる国や資金拠出の方法など運用の詳細は来年のCOP28で決める。
 一方、温室効果ガスの削減対策で前進がなかった。昨年のCOP26で、産業革命前からの温度上昇を1・5度に抑えることが事実上の世界目標となった。ところが、最新の研究報告では世界各国が現在約束している削減目標でも抑制は不十分と指摘されている。
 このままでは気候変動の被害はさらに大きくなる恐れがある。日本を含めて先進国は削減目標の強化を打ち出す必要がある。現在の地球温暖化を引き起こしたのは、日本を含めた先進国が野放図に大量の温室効果ガスを排出してきたためだ。その過去を自覚し、責任を果たさなくてはならない。
 損失と被害の問題は、気候変動への責任がほとんどないのに海面上昇の危機にさらされる小島嶼[しょ]国が30年前に提起した。アフリカ諸国も含めて要求が高まり、今回のCOP27で初めて正式議題となった。巨額の負担を懸念する先進国からは反対する声もあったが、頻発する途上国での深刻な気象災害を背景に、最終的には歩み寄る形で合意に達することができた。
 とはいえ、十分な資金規模を備え、利用しやすい支援の仕組みができるかは今後の議論に委ねられている。温室効果ガス排出に責任がある先進国は途上国と連携し、実効性を高める努力をしなければならない。さらにこれ以上の損失と被害を出さないためにも温暖化の抑制は重要となる。
 日本国内では気候変動対策の議論は低調なままだ。しかも日本は先進7カ国(G7)の中で唯一、新規の石炭火力発電所の建設を進めている。環境団体が気候変動対策に後ろ向きな国に贈る「化石賞」の常連でもある。
 岸田文雄首相は内政問題に足を引っ張られ、COP27の首脳級会合に出席できなかった。脱炭素への本気度を疑われても仕方がないと言えよう。
 来年5月には、首相の地元広島市でG7サミット(首脳会議)が開催される。当然、G7でも気候変動問題が重要テーマの一つになる。G7議長国として議論をリードするためには、自ら削減目標を強化する必要がある。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

社説の記事一覧

他の追っかけを読む