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細江「姫様道中」存続の危機 民間事務局では維持「限界」 住民理解得る形、模索を【解説・主張しずおか】

 浜松市北区細江町で70年間続く春の風物詩「姫様道中」(実行委主催)について、2023年度以降の存続が不透明な状況に陥っている。事務局の継続が困難になっていることに加え、住民アンケートで約45%が「継続不要」と回答した。実行委員会が存続を目指している以上、自治会や市、商工会などで作り上げる地域の象徴的行事として運営基盤を立て直し、地元住民の理解が得られる形での継続可能性を模索してほしい。

アンケート結果を基に姫様道中の今後について議論を交わした実行委の会合=11月上旬、浜松市北区細江町
アンケート結果を基に姫様道中の今後について議論を交わした実行委の会合=11月上旬、浜松市北区細江町

 「細江のお祭りという意識が薄れている」。11月上旬に開かれた実行委の会合。細江町の全世帯を対象にしたアンケートの集計結果が示され、議論が交わされた。近年は少子化や若者の流出により地域住民が姫様役や腰元役を担うのが難しくなり、地域外から参加者を募っている。町民から徴収する負担金への反発も大きくなっているという。
 江戸時代に東海道の脇街道「姫街道」を通行した姫様の行列を再現した姫様道中は、旧気賀町が70年前に始めた。事務局の運営は、旧細江町時代は町や地元商工会が担ったが、15年に市から民間に移行。長年関わってきた事務局員らも本年度での辞意を表明し、「しっかりした母体がないと、民間の力だけで続けるには限界がある」と本音を漏らした。
 市町村合併を機に行政の関わり方が変化した例は姫様道中に限らない。同区は旧浜松市などとの平等性から、地域事業の民間主体による運営へ移行を進めてきた。同区三ケ日町の三ケ日花火大会も同様。かつて一翼を担った地元商工会などが手を引いたこともあり、事務局の後継者不足は喫緊の課題だ。実務に携わる80代男性は「プログラム作りや寄付金集めが大変。来年も同じ規模で開催できる保証はない」と話す。
 同区引佐町のいなさ人形劇まつりは、現在は引佐協働センターが担当職員を配置し、窓口など事務局の役割を果たすが、市は実行委として関わる引佐まちづくり協議会などを主体とした運営に向けて計画的に移行を進めるとしている。
 住民主体の行事に地元の理解と協力は不可欠。姫様道中では、アンケートの約52%が継続を望み、700世帯以上が「運営に協力できる」とした前向きな結果もある。存続に向けては、事務局の運営基盤を固めて「行列の見直し」「数年おきに開催」「地元小中生の出演」など実現可能な方法を模索し、地域全体で盛り上げる姿勢がいま一度重要になる。

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