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社説(11月18日)純益減の中間決算 賃上げと価格転嫁 急務

 急激な円安と物価高は、企業業績にメリット・デメリット両面で作用した。静岡県内の上場企業の2022年9月中間決算は、最終的なもうけを示す純利益の合計が前年同期比0・6%減。円安基調は当面変わりそうもない中、低金利政策を続けて景気浮揚を期す国内で、経済の好循環を起こす賃上げと価格転嫁の対応強化が急務だ。
 静岡新聞社が集計した県内に本社や拠点を置く上場企業(金融機関など除く)32社の中間決算は、売上高合計が前年同期比24・7%増と大幅伸長した。新型コロナウイルス禍で一時停滞した生産活動や物流などの回復を受け、23社が増収。特に海外販売が好調な製造業は円安が追い風となり、スズキ、天龍製鋸、村上開明堂は過去最高となった。
 一方、約6割の企業は原材料・燃料の価格上昇や円安などのマイナス作用で利益が削られ、最終減益は13社、最終赤字は7社を数えた。内需型企業で食品加工はあらゆる原材料価格が高騰した上に価格転嫁も追い付かず、業績悪化が顕著に現れた。非製造業も小売業が光熱費や物流コストの増加が響いた。物価高で消費者に広がりつつある買い控えを懸念する声も目立つ。
 下半期は海外市場が主要国の度重なる利上げを受け、各国景気の減速懸念が増している。それだけに企業の収益確保には、国内景気の浮揚が鍵を握ることになろう。
 ただ内閣府が15日発表した22年7~9月期の国内総生産(GDP、季節調整値)速報値は、物価変動を除く実質で前期比0・3%減、年率換算は1・2%減と1年(4四半期)ぶりのマイナス成長。物価高などで個人消費の停滞が鮮明となり、GDP全体を押し下げた。今こそ企業収益を賃金上昇や雇用拡大につなげ、消費拡大や投資増加を通じてさらなる企業収益の拡大に結び付ける努力を欠かしてはならない。
 原資を確保できる企業から賃上げを講じ、物価高が消費に与えるダメージを緩和するよう力を尽くしたい。そうしなくては、製品・サービスの値上がりに対する消費者の許容度が高まらず、デフレから完全脱却もできない。
 地域の中小企業は、上場企業以上に物価や調達コストの増加分を製品・サービスの価格に十分転嫁しきれず、苦しんでいる。サプライチェーン(供給網)内で原価低減活動のしわ寄せが中小に及ぶ事態を避け、価格交渉で圧倒的優位な立場にある大手企業が適切な配慮で中小から部材を調達し、中小も賃上げ原資を捻出可能な環境を育んでほしい。

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