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社説(11月11日)接戦の米中間選挙 対外影響力低下避けよ

 米中間選挙は、野党共和党の圧勝という事前予想を裏切り、連邦議会上院は大接戦となった。下院は共和の過半数奪還が確実視されている。
 下院を共和に奪われることで政権と議会の「ねじれ」が生じる。上下両院の多数派を与党民主党が握っていた選挙前とは異なり、バイデン大統領は議会で法律を成立させることが難しくなり、政策遂行が難航すると考えられる。
 中国に対する姿勢は共和も民主と変わらないだろうが、より先鋭化する可能性がある。侵攻したロシアと戦うウクライナへの支援は、共和からは削減と受け取れる声が上がっている。自由主義世界の盟主を務めてきた米国の方針変更の影響力は大きい。政争の激化という内政の混乱を受け、対外的な指導力の低下が気がかりだ。
 気候変動問題は国際協調が欠かせない。混沌[こんとん]とする世界で先進7カ国(G7)の連携と主導性も保たなければならない。日米同盟を外交の基軸とする日本は引き続き、安全保障や経済の両面で関係の緊密化を図ることになる。その上で米国が内向きにならないよう強く働きかけてもらいたい。
 大統領任期の中間年に行われる中間選挙は、現職大統領や政権への評価が問われるとされ、上院は3分の1、下院は全議席が改選される。政権に不満を抱く有権者が厳しい審判を政権与党に突き付けるため、下院は野党に明け渡すことが多いという。
 8%超のインフレに有効に対応できなかったバイデン氏の支持率は大きく低迷。民主は連邦議会議事堂の襲撃事件に象徴される民主主義の危機や人工妊娠中絶を巡る問題を中心に訴える一方、共和はインフレや不法移民対策など国民生活に直結する問題を取り上げ、論戦の方向は全く異なっていた。
 加えて過激な政治手法を取るトランプ前大統領が分断を強めている。トランプ氏の推薦を受けた共和候補にはバイデン氏の大統領当選を認めない者がいるし、トランプ氏の支持者には暴力的な行動を辞さない者もいる。
 実際に支持者とみられる男が、民主のペロシ下院議長宅を襲う事件も起きた。こうした乱暴な手法への反発が無党派層にも広がり、劣勢だった民主の善戦につながったという見方もある。
 トランプ氏は党内も分断して政敵を排除し、2024年大統領選に出馬する意向を示唆している。その大統領候補へのハードルは高いとみられるが、下院で多数派を握れば共和はさまざまな面で揺さぶりを掛けてくると予想される。米国内の分断と対立の激しさとその影響からは目が離せない。

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