即戦力見込んだ夏の補強 効果限定的 見えぬ編成のビジョン【降格再び 清水来季J2へ㊦】
今夏、残留争いをするチームの中でJ1清水の補強の積極さと話題性は際立っていた。元日本代表FW北川の3季ぶりの復帰。ブラジル1部クラブの主力で、俊敏性が登録名の由来となったMFヤゴピカチュウ。極め付きはJ1C大阪を退団していた元日本代表MF乾の加入。いずれも即戦力を見込んだ獲得だった。

乾は8月27日の京都戦で決勝ゴールを挙げ、北川も状態を上げてリーグ終盤は先発に定着した。ただ、皮肉にも最終節は出場停止やけがでともに欠場。ヤゴピカチュウは自慢の得点力を発揮できずにシーズンを終えた。大金を投じて残留に向けてなりふり構わず打った手は、限定的な効果にとどまった。
3選手はいずれも攻撃的なポジションが主戦場。そもそも飽和気味だった位置への追加補強は、既存選手の出場機会に影響を与えた。近年の数少ない生え抜きの有望株で、前半戦はチームの核だったMF鈴木唯は控えやベンチ外に押し出された。U-21(21歳以下)代表で10番を背負うパリ五輪世代のエースが、代表活動で十分なプレー時間を得てコンディションを上げるさまは異様だった。
ヤゴピカチュウを加えた外国籍選手は登録枠の5人を上回る8人に。“助っ人”をチームの軸に据えるようないびつな編成は続いた。ルーキー5人のうち、主力に定着したDF山原を除く4人は夏には皆、期限付き移籍で他クラブのユニホームを身にまとった。就任3年目の大熊清ゼネラルマネジャーがうたう「育成型チームの確立」のビジョンは、今季も見えなかった。
計画性の乏しさは、期限付き移籍中と来季加入内定者を含めて計46人に膨れあがった保有選手数も物語る。責任企業の支援金を受けて過去最高を続ける強化費だけが、積み上がっていった。
クラブとしての方向性やチーム編成の長期的視点が曖昧なまま、目先の結果にとらわれる。低迷すると理由を監督や選手に求め、やみくもに入れ替える。そんな2、3年の末路がJ1からの陥落だった。本当の原因を正すことなくして、かつての名門の復活はない。