サッカー王国、どこへ J1静岡県勢消滅 復権願うサポーター
サッカーJリーグ1部(J1)から静岡県内クラブがついに消滅する。清水エスパルスの2度目の2部(J2)降格が5日、決まった。前節で降格が決定したジュビロ磐田とつなぎ留めていた県勢のJ1の灯。かつて「サッカー王国」の象徴だった二つのクラブは強さを取り戻せないまま、ついに同時に落日を迎えた。
札幌市の札幌ドームで最終戦に臨んだ17位清水。J1参入プレーオフに回る16位との勝ち点差は2で、勝利が必須の条件の中で試合を迎えた。崖っぷちに立ったチームを後押ししようと、ビジター席を大勢のサポーターが埋めた。
富士市出身で、都内在住の会社員南尚寿さん(28)は「得点は取れるはず。最後まで粘り強く守って勝利をつかんでほしい」と願いスタジアムに入った。しかし、試合は終盤に守備が耐えきれず、無情のホイッスルが鳴った。
近年、最終盤まで残留争いに巻き込まれる成績低迷が毎年のように続いていた清水。今季も序盤から振るわず、リーグ戦の折り返しが近づく5月には4季連続となるシーズン途中の監督交代を決断した。夏場には一時浮上したが、最終盤で7試合勝ちなしと急失速した。
編成トップの大熊清ゼネラルマネジャー(GM)は「90分間のマネジメントができなかった」と勝ち点を取りこぼした内容を要因に挙げ、「足りなかった部分を謙虚に見つめないと」と言葉を絞り出した。
すでに降格と今季の最下位が確定していた磐田は、磐田市の本拠地ヤマハスタジアムで最終戦を戦った。試合後、小野勝社長(64)はサポーターの前に立ち、シーズン途中での監督、強化責任者の解任などさまざまな混乱を挙げ「心配をかけて申し訳ない」と深々と頭を下げた。サポーターは「一貫性のないフロントの姿勢に不信感しかない」と記された横断幕を掲げ、猛抗議した。
磐田サポーターの鈴木博也さん(38)=浜松市浜北区=は「県内からJ1クラブがなくなるのはさみしい。2チームが早くJ1で優勝争いするようなチームになって戻ってきてほしい」と願った。
静岡から祈り届かず パブリックビューイングに2000人
清水エスパルスが敵地でコンサドーレ札幌との最終節に臨んだ5日、静岡市葵区のJR東静岡駅北口広場ではパブリックビューイングが行われた。J1残留には勝利が絶対条件の大一番。約2000人のサポーターが詰めかけたが、清水は3-4で敗れ願いはかなわなかった。
J1残留には札幌に勝った上で、他会場の結果次第となる厳しい状況。それでも、夫婦で訪れたパートの勝美江理佳さん(28)=静岡市葵区=は「どんな結末になったとしても、この試合には勝ってほしい。オレンジ魂を札幌に届ける」と試合中継を見つめた。
清水にとっては2度目のJ2降格で、来季は史上初めて静岡からJ1クラブがなくなることになる。藤枝市の会社員杉山公彦さん(37)は「降格は残念だし(サッカー)王国としてJ1にクラブがないのはさみしい。静岡はサッカーで染まっている地域。来季はその意地を見せてほしい」と復権を願った。