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障害者との共生、実現へ 議論と柔軟変化 継続を【風紋】

 障害者権利条約が2006年に国連に採択され、共生社会の実現は世界的な潮流となった。日本は11年に障害者基本法を改正し、14年に同条約の批准国となった。バリアフリー化をはじめ、共生に向けて設備整備などが進められているが、実現はまだ遠い先だろう。
 浜松市は18~23年度を計画期間とする「第3次市障がい者計画」で、重点施策の一つに防災対策を挙げた。改正災害対策基本法によって策定が自治体の努力義務になった個別避難計画の作成を急ぎ、同意を得た高齢者などを含む市民約9800人のうち、約7千人分の整備を進めた。
 ただ、要支援者全体では約18万5千人に上るため、市民理解や認知度の促進が課題といえる。県全体でも、要支援者名簿に掲載された人数に対する作成率は8月1日時点で8・61%と難航している。
 県内で長く課題とされてきた障害者支援体制の一つに、短期入所機関の不足がある。医療的ケアが必要な障害者を在宅介護する家族の「介護疲れ」問題が顕在化し、介護者の休息のための短期入所利用が重視される一方、短期入所を受け入れる医療機関は少ない。
 県は17年から助成制度を実施するなどして、10カ所から目標の15カ所までサービスを担う医療機関を増やしたが、医療・介護職人材の不足や、近年では新型コロナの影響もあってニーズには応えきれず、増設や質の向上を求める声は残る。
 ほかにも、障害者の雇用、福祉サービスの財源など議題は山積みだ。漠然とした「共生社会」の実現には不安を覚える。浜松市で運営する障害者向け事業所に一般人が利用できるゲストハウスを併設するなど、先進的な取り組みを行うNPO法人「クリエイティブサポートレッツ」の久保田翠理事長(60)は「正解を求めず、混沌(こんとん)とした社会を耐え、考え続けることが重要」と語る。
 目の前の問題を対処しながら柔軟な変化を続ける社会こそが、共生を実現するのではないか。取り組みや議論の結果が理想にそぐわなかったとしても、目を背けず、継続する粘り強さが求められる。

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