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テーマ : 御殿場市

御殿場・ハンセン病施設 構想12年“身近な駿河療養所”遠く 立地や制度障壁、コロナが追い打ち

 ハンセン病の元患者が入所する国立駿河療養所(御殿場市神山)の将来の在り方を巡る議論が停滞している。施設や入所者、市、地域住民でつくる検討委員会が将来構想案を策定してから12年経過したが、実現への動きは具体化せず、新型コロナウイルス禍で地域との交流も途絶えた。入所者の高齢化が進む中、関係者の1人は「入所者が考えをはっきり示せるうちに進めなければいけない」と訴える。

新型コロナウイルス禍の影響で一般外来患者の受け入れを停止している=9月中旬、御殿場市神山の国立駿河療養所
新型コロナウイルス禍の影響で一般外来患者の受け入れを停止している=9月中旬、御殿場市神山の国立駿河療養所
新型コロナウイルス禍の影響で一般外来患者の受け入れを停止している=9月中旬、御殿場市神山の国立駿河療養所
新型コロナウイルス禍の影響で一般外来患者の受け入れを停止している=9月中旬、御殿場市神山の国立駿河療養所
新型コロナウイルス禍の影響で一般外来患者の受け入れを停止している=9月中旬、御殿場市神山の国立駿河療養所
新型コロナウイルス禍の影響で一般外来患者の受け入れを停止している=9月中旬、御殿場市神山の国立駿河療養所

 2010年にまとめた構想案は入所者が安心して暮らせる環境の確保を前提に、地域に開かれた施設を目指した。①医療施設の充実②人権啓発・交流施設として開放③公共バス路線確保④福祉施設としての開放-を重点項目に掲げた。
 13年には一般外来患者の受け入れが始まり、市の医療マップに療養所が掲載された。毎年春と夏には施設が開放され、入所者と住民の交流の機会になった。中学校での啓発授業も行われている。
 だが、目指した将来像にはほど遠く、各重点項目の実現に向けた手順やスケジュールは定まらないまま。住宅地から離れた山中という立地、民業圧迫回避を原則とする各種制度が障壁になっているとされる。コロナ禍で一般外来患者の受け入れや施設開放を停止し、療養所は「(国策として)隔離されていた時に近い状況になってしまった」(北島信一所長)という。
 バス路線確保など現実に即さない内容もあり、「構想案自体を考え直さなければいけない時期に来ている」との声も上がる。ただ、コロナ禍の影響で検討委員会の対面での定例会は19年を最後に開かれず、就任してから一度も出席していない委員もいるという。
 今年4月1日現在の入所者47人の平均年齢は87・04歳。市は今秋、委員の研修を行い、改めてハンセン病や駿河療養所について理解を深める機会にする。事務局を担う市社会福祉課の担当者は「入所者の気持ちを第一に考え、構想案に基づき取り組みを進める」としている。

 ■入所者「できることから」
 駿河療養所の将来構想検討委員会は「将来構想を地域の皆さんと共に考えたい」という入所者自治会の要請を受け、2008年に発足した。当初から委員を務める同会会長の小鹿美佐雄さんは将来構想について「何とかしなければという気持ちはある。話し合いを続け、施設を集会の会場として使うなどできるところから進めるしかない」と語る。
 「入所者には自分が生きているうちは施設があればいいという諦めもある」とも明かす。
 将来構想は過去にたびたび市議会で取り上げられた。市議の1人は「療養所には充実した設備や機能があり、地元住民のために活用しないのはもったいない。国を動かすためにも市が積極的に議論を進めるべきだ」と強調する。市は過去に構想案を国に提出し関与を求めたが、返答は得られなかったという。市社会福祉課の担当者は「国の施設なので市では動きにくい」と話す。
 一方、療養所の北島信一所長は、建物や施設内の納骨堂に眠る元患者の慰霊の在り方など施設自体の将来的な課題も含めて、入所者や自治体、地域住民と協議したいとの考えを示す。

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