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社説(9月22日)NISA拡充 知識力底上げと両輪で

 金融庁は本年度(2022年7月~23年6月)の金融行政方針で、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充を掲げた。国民の貯蓄から投資への動きを後押しするためにも、より簡便な制度に再構築するだけでなく、金融リテラシー向上に資する環境整備が不可欠だ。
 日銀の統計では、国内家計の金融資産残高(22年6月現在)は約2千兆円で、うち現預金が5割を超える。一方で株式や投資信託の割合は2割程度と、欧米より低水準にとどまる。国内で物価高が進んでいる。今後にインフレとなれば現金の価値が目減りする局面となり、投資の必要性は高まっていると捉えることもできる。
 もっとも、これまで投資に距離を置いていた国民が、自身のニーズや人生設計に即した金融商品・サービスを選び、分散投資などで安定的な資産形成を実践するには、知識とスキルを身に付けていくことが欠かせない。
 金融広報中央委員会(事務局・日銀)が国内3万人に投資や金利など金融の基本的知識を調べた結果、静岡県民の正答率は56・4%で、3年前の前回から2ポイント低下した。都道府県別順位は5位から16位に下がった。この現状で県民が足を踏み入れられるほど、投資は決して甘くないのを忘れてはならない。知識力の底上げが急務だ。
 高校の学習指導要領が改定され、各地で金融経済教育が強化されつつあるが、経験豊富で金融情勢を分析できる人材を多数育成し、県民に広く教育機会を提供可能な態勢を整えたい。
 14年に創設されたNISAは一般・積み立て・ジュニアの3種類があり、消費者などから制度が複雑だったり、違いが分かりにくかったりするとの意見があった。日本証券業協会などが実施したアンケートで、NISA口座を開設しない理由は最多が「そもそも投資する気がない」、次いで「制度が煩雑でよく分からない」だった。
 こうした中で金融庁は8月末に示した23年度税制改正要望で、NISAを積み立て型に一本化するとした。また時限措置を外して制度を恒久化し、投資枠の上限額を引き上げ、株式にも投資できる「成長投資枠(仮称)」も新設するとしている。
 国内財政が悪化の一途をたどる中、若い世代を中心に年金制度への不信感は強いとされる。実際、同アンケートの年代別分析では、NISA口座を開設する意向が若い世代ほど高い傾向が現れている。より理解しやすく、使い勝手が良い制度になれば、将来に向けた資産形成の必要性を意識する世代に、選択肢を示すことにつながる。

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