記者コラム「清流」 共に生きる
長泉町で開かれたダウン症の書家金沢翔子さんと母泰子さんの講演会。開演間際、会場に泰子さんの欠席が伝えられた。全国を巡る親子だが、翔子さん一人が舞台に立つのはこの日が初めてだった。
体調不良の母親を気遣い、こらえきれず涙を流す翔子さん。このまま書道パフォーマンスを続けて良いのか-という迷いが見えた直後、泰子さんからの電話で励まされた翔子さんの表情は一変。呼吸を落ち着かせ「共に生きる」と堂々と書いて見せた。
静寂の中で繰り広げられた数分の出来事に、会場は感動の拍手に包まれた。来場者はみな同じ思いで、親子の絆を温かく見守っていただろう。東京パラリンピック開催から1年。目の前の「共生」の文字に、障害への理解の意義を改めて感じた瞬間だった。
(東部総局・水野紗希)