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どうする?離婚後の子育て①【賛否万論】

 「夫婦の3組に1組が離婚する」といわれる時代が続いています。男性の育児参加が進む今、離婚時の最大の障壁は「どちらが親権を持つか」。両親の激しい親権争いに子どもが巻き込まれていると指摘されています。法制審議会(法相の諮問機関)は、離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」の導入を検討してきましたが意見はまとまらず、国民の賛否も割れています。離婚後の子育て、あなたはどう考えますか。

単独親権のみが認められている国 共同親権も認められている国
単独親権のみが認められている国 共同親権も認められている国
養育費の受給状況
養育費の受給状況
面会交流の実施状況
面会交流の実施状況
単独親権のみが認められている国 共同親権も認められている国
養育費の受給状況
面会交流の実施状況

 (社会部・南部明宏、大須賀伸江)

共同親権の導入検討 両親の愛情注がれるのが理想


 厚生労働省の調査によると、未成年の子どもがいる夫婦の離婚は2020年に約11万1000件あり、妻が子ども全員の親権者となる離婚が84.6%を占めた。同省が16年度に実施した別の調査では、母子世帯のうち、離れて暮らす父と面会交流している割合は29.8%、養育費を受給している割合は24.3%にとどまった。

 面会交流の拒否や、子どもと会えなくなった別居親による養育費の不払い、ひとり親世帯の貧困など、さまざまな問題が表面化している。夫婦関係が壊れた後も子どもには父母双方の愛情が注がれるのが理想的な姿だが、現実は難しい。

 法制審議会はこれまで通りの「単独親権維持」のほかに、共同親権も選択できるようにする案を昨年から協議。共同親権を導入した場合の課題の洗い出しなどを進めてきた。
 

再び両親が対立も


 共同親権・共同監護が導入されれば父母双方が養育に責任を持つことになり、子どもの進学や財産管理など重要事項については両者で協議することになる。導入のメリットとして、面会交流や養育費の支払いがスムーズに行われる▽親権を巡る父母の激しい対立や、片方の親が突然子どもを連れて出て行く問題が解消される-などが期待されている。

 一方、懸念されるのはドメスティックバイオレンス(DV)や虐待などの解決が持ち越されてしまうケース。父母の関係が悪い場合は協議がうまくいかず、進路問題などの長期化も予想される。

 静岡市の支援団体シングルペアレント101は「両親の対立から免れた子どもが、共同親権で再び渦中に引き戻されてしまう」と訴える。「ひとり親の8割が共同親権の導入に消極的」という、全国のひとり親支援団体の調査結果もある。

 海外では共同親権を採用する国が多い。法務省によると、調査した24カ国のうち22カ国で、共同親権の選択肢を用意している。協議次第で単独親権にできたりするなど運用方法はさまざまだが、日本のような「単独親権のみ」はインドとトルコだけだった。
 

国際問題にも発展


 こうした親権制度の違いは、国際問題にも発展している。海外で離婚した日本人が無断で子連れ帰国するケースが相次ぎ、欧米主要国は「子どもへの重大な虐待だ」と日本を非難。2020年には欧州連合(EU)欧州議会が日本に対して法整備を含めた改善を求める決議案を採択した。

 どの国でも親権制度を考える上で重視されるのは「子にとって何が最善の利益か」という考え方。子どもにとって両親はいつまでも両親であり、「子どもを置き去りにした議論は否定されるべきだ」という声は高まっている。

 国内では、共同親権の導入が子の幸せに寄与するか-を巡り、推進派、反対派で見解は真っ二つに割れたままだ。法制審議会は中間試案を取りまとめた後、パブリックコメント(意見公募)を実施する。単独親権の維持か、共同親権の導入か。議論はヤマ場を迎えている。
 

賛成派/今なら冷静に話し合いも


 「子どもは自分にとって、生きる支えだった。親であることを否定され、人生を狂わされる今の制度は理不尽そのもの」。県東部地区の40代男性は言葉を詰まらせながら共同親権の導入を訴えた。
  photo02 子どもの写真を見ながら思い出を語る男性。コロナ禍で面会交流は月1回に減った
 元妻が5歳と2歳の子どもを連れて出ていったのは7年前。仕事から帰宅すると、もぬけの殻だった。「一度も手を上げていない」のに暴力を理由にされた。調停と訴訟に5年を費やしたが「継続性の原則」を重視され、親権は元妻に。線路に飛び込むことばかり考える日々が始まった。

 面会は2カ月に3回の約束だったが、コロナ禍で月1回4時間に減った。当日は予定を詰めて子どもたちを楽しませ、別れた後は車のハンドルを涙でぬらして一人の家に帰る。「悲しいイベントでもあるんです」

 共同親権に関する議論の中で、反対派から浴びせられる「別居親は親権が無くても、子どもに会えればいいんでしょ」という声はあまりに乱暴と感じる。「今のままでは、自分は単なるATM(現金自動預払機)。親権者になって、もっと養育に関わりたい。夫婦だった時よりも赤の他人となった今の方が、子どもの進路などについて元妻と冷静に話し合えると思う」

 制限時間を気にすることなく、何でもない時間を子どもと過ごせる日を夢見ている。
 

反対派/離婚夫婦の連携は難しい


 昨年離婚した県中部の30代の会社員女性は、離婚で自身が親権者となった長男(5)と、元夫との面会交流を積極的に行いつつ、共同親権の導入に疑問を示す。「現行制度下でも十分交流はできる。共同親権制度によって話し合いを強制されることは、子の利益につながるのか」
  photo02 女性は元夫とメッセージアプリでやりとりする。長男を預けた後、元夫は写真を撮影して送ってくれるという
 元夫とは「子どもの気持ちを尊重する」と約束した。交流は当初の取り決めより頻繁で、長期休みに1週間近く預けたことも。うまく連携していると見えるが、女性は「両親の価値観の違いに長男が混乱することがある」と明かす。「例えば、私は『男らしく』という言葉が嫌いだが、元夫はよく使う。そうした違いを長男は感じ取っているようで、帰宅後妙に甘えたり、突然怒り出したりすることがある」と話す。

 共同親権で気がかりなのは、進路など重要事項の決定時に協議が必要になること。子と別居親との関係が順調でも「離婚という決断に至った元夫婦が、歩調をそろえるのは簡単ではない」

 女性はさらに「元夫婦の対立が大きい場合はなお過酷だ。公的支援が不十分な中で直接話し合うことを怖がる女性は多いはず。間に立つ子どもの支援も、(法制審議会の)中間試案のたたき台で触れられていない」と指摘する。
 

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 共同親権の導入議論について、あなたはどう考えますか。さまざまな立場からの投稿をお待ちしています。お住まいの市町名、氏名(ペンネーム可)、年齢(年代)、連絡先を明記し、〒422―8670(住所不要)静岡新聞社編集局「賛否万論」係<ファクス054(284)9348>、<Eメールshakaibu@shizuokaonline.com>にお送りください(最大400字程度)。紙幅の都合上、編集させてもらう場合があります。

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