あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

富士宮のワーケーション誘致、首都圏企業に照準 地域の理解と協力が鍵【解説・主張しずおか】

 富士宮市が首都圏企業をターゲットに、休暇を兼ねながら仕事をするワーケーションの誘致に動きだして3年目。日本航空がワーケーション推進を目指し自治体と企業をつなぐ目的で発足させた「ワークスタイル研究会」に県内で唯一参加し、地元民間団体とモニターツアーを企画するなど「富士宮ならではのワーケーションの形が見えてきた」と市担当者は手応えを口にする。魅力的なワーケーション体験の提供し、継続的なものにしていくには地域の協力が不可欠。地域にその価値をどう示せるかが鍵となる。

クラフトビール醸造所を営む地元経営者と語り合うモニターツアーの参加者=富士宮市大鹿窪
クラフトビール醸造所を営む地元経営者と語り合うモニターツアーの参加者=富士宮市大鹿窪

 時間や場所にとらわれない働き方が広がる中、富士宮市は2020年度にテレワークやワーケーション誘致に向けた調査を始めた。首都圏企業を招いたモデルツアーを繰り返して、たどり着いたのが「業務型」。「企業を相手にしたワーケーション誘致は業務時間の活用に富士宮を訪れる理由が必要だと感じた」と市地域政策推進室の担当者。ツアー行程のうち休暇の時間を減らして半分は仕事時間に充てる方向性を選んだ。
 ワークスタイル研究会の一環で8月31日~9月2日にはエコツーリズム開発支援を手掛ける一般社団法人エコロジック(同市)と市でJALグループやIT企業を招いたモニターツアーを実施する。「富士山SDGs」をテーマに国立公園を活用し、富士山麓の豊かな自然や富士山と向き合いながら暮らす地元住民との交流を通じてSDGsの気付きを得る内容。新規事業を生み出すプログラムも取り入れた。企業が富士宮をワーケーションで利用する動機付けになりそうだ。研究会で企業ニーズをとらえた発信ができれば、誘致の弾みとなる。
 地元側の受け入れ態勢構築に向けて、市では観光関係者らを対象にした勉強会の開催を計画している。富士宮は年間数十万人がキャンプ場を利用し、夏場は富士登山者が多く訪れるなど、県内有数の観光地。一方で、休日や連休に観光客が集中することによる交通渋滞や市街地への限定的な波及効果などの課題も指摘されてきた。
 企業が業務の一環で行うワーケーションは平日の交流人口、関係人口を増やすことにつながり、プログラムに応じて市街地への誘導が可能になる。滞在型の観光都市実現へ、新しい観光誘客のあり方やビジネスチャンスとしても地域に価値を提案できそうだ。ワーケーション誘致の先に、企業のサテライトオフィス誘致や移住定住を見据える上でも、地域の理解は欠かせない。

 

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ