静岡人インタビュー「この人」 天竜材水平連携協議会会長として地域製材のネットワーク化に尽力する 石野秀一さん(浜松市浜北区)
協議会は天竜材の安定供給のための事業連携を目的に、浜松市内の製材所を中心に設立された。大、中規模の木造建築に対応可能な体制づくりを進めている。59歳。
-立ち上げの経緯は。
「2015年に完成した草薙このはなアリーナの建材として、天竜材を納材する話が持ち上がった。ただ、個々の製材所で対応できる規模ではない。そこで地域の同業者のネットワークを作り、総力を挙げて納材する方法を考えた。集まった20社中16社が製材工場。県内初の試みだったが、短い納期で厳しい規格と品質基準をクリアすることができた」
-設立の効果は。
「これまでライバルだった業者同士で一つの事業を行うには、まず信頼関係を作ることから始める必要があった。このはなアリーナの成功が、その垣根を低くすることにつながった。その後は静岡空港や東京五輪の選手村などへの納材を請け負うなど、対応力は高まっている」
-地域の課題は。
「小規模の製材所が多く、思い切った設備投資が難しいのが現状。旧式の機械では多様なニーズに応えることが難しく、後継者不足も深刻だ。これでは、将来的に一定の生産量が確保できなくなる。連携を強めていき、一般の事業でも数社で共同するような体制も構築していきたい」
-今後の展望について。
「協議会の枠組みを使って、共同の製材施設を造ることも考えていく必要がある。実際に三重県や愛知県では導入事例がある。公共事業の木質化は今後さらに進み、25年には大阪万博も控えている。これまで培ってきた力を発揮し、天竜材ブランドのPRと安定した経営基盤づくりを進めていきたい」
(天竜支局・垣内健吾)