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特集 : 社説

社説(8月16日)再審制度の不備 法改正に向けた議論を

 現行の再審制度は法規定が乏しく冤罪[えんざい]の救済につながりにくいと訴える日本弁護士会連合会(日弁連)は、速やかな法改正を目指して「再審法改正実現本部」を新設した。再審請求手続きでの全面的な証拠開示と、再審開始決定に対する検察官の不服申し立ての禁止を柱に改正案を策定し、立法府などへの働き掛けを強化していく。
 日弁連は1960年代以降、法改正を求め続けているが、法務省は消極的な姿勢を変えていない。国会議員の関心も低いと言わざるを得ない。
 無実の人を罰する冤罪は、国家による最大の人権侵害で、再審制度は冤罪被害救済の最終手段である。政府も国会議員も、日弁連が指摘する再審の制度的な問題は真摯[しんし]に重く受け止めなければならない。不備があれば改正する方向で議論すべきだ。
 日弁連は、裁判をやり直す再審について定めた刑事訴訟法第4編を「再審法」と呼んでいる。再審規定は19カ条のみで、審理の進行や証拠開示などの手続きは裁判官の裁量に委ねられている。再審開始に積極的か消極的か裁判官の姿勢で結果が左右される「再審格差」が生じているともいわれる。
 不公平感の是正には具体的な法の規定が必要だ。裁判員制度の導入によって通常の裁判では幅広く証拠が開示されるようになり、再審手続きでも開示された証拠が再審開始決定や再審無罪につながったケースは多い。全面的な証拠開示は再審の行方のかぎを握る。
 いったん再審開始が決定した後、検察官が不服を申し立て、延々と審理が続いている事件があることも日弁連は問題視している。静岡市清水区で66年にみそ会社専務一家4人が殺害された「袴田事件」や、鹿児島県大崎町で79年に男性の遺体が見つかった「大崎事件」がその代表例だ。
 裁判所の再審開始決定に対する検察官の抗告は認められているが、この二つの事件はあまりにも長期化している。いったん下された有罪判決を覆されたくないのは検察官の正直な心情だろうが、「疑わしきは罰せず」という刑事司法の大原則は、再審でも貫かなければならない。冤罪被害者の早期救済には、検察官の不服申し立ての制限が有効な手だてとなる。
 まだ数は少ないものの、三島市、下田市など法改正を求める意見書を可決する地方議会が徐々に増えている。冤罪は殺人のような重大事件だけでなく、痴漢の濡れ衣を着せられる被害も相次いだ。誰もが無縁とは言い切れないのではないか。国民の関心の高まりが法改正を後押しする。

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