止まらない円安「これ以上進んだら…」 静岡県内中小の小売、製造業が悲鳴
円相場が6月下旬以降、1ドル=130円台で推移するなど、歴史的な円安基調の中、輸入物価の高騰で県内の中小の小売、製造業者が苦境に立たされている。原材料・エネルギー高に加え、価格転嫁も思うように進まず、経費はかさむばかり。円安は当面継続するとみられ、事業者からは「既に経営は十分に苦しい。これ以上の円安は困る」と悲鳴が上がる。
豆腐製造業の白帆タンパク(静岡市清水区)では、原料の米国やカナダ産大豆の仕入れ値が年初比で約5割上がり、30キロ当たりで約3500円から5000円以上に急騰した。油揚げに使う菜種油も2倍以上に膨らむなど、穀物相場の上昇に円安が拍車を掛ける。
スーパーなど複数の卸先では、同社が納めた豆腐の販売価格は1パック30~40円程度で据え置かれたままという。上野勝彦社長(70)は「見積もりを増額して提示したら、受注が減ったこともあった」と明かし、価格転嫁が進まない状況にもどかしさを募らせる。
工場内の空調稼働率を下げるなど経費節減策に努めるものの、「円安が解消されなければ、事態は打開しない」とため息をつく。
「今後も同じ値段で提供できるか分からない」とこぼすのは「フルーツパーラーTASTAS」(浜松市中区)の柘植享将オーナー(31)。主力商品のパフェやカットフルーツ盛り合わせに、輸入物のオレンジやパイナップルなどを使用する。
2019年の開店以来、一部の定番商品は販売価格を維持してきたが、飼料の高騰で乳製品も値上がりするなど、円安で経営環境は厳しさを増す。「価格転嫁は顧客の理解を得られるだろうか」と不安を口にする。
静岡市葵区の輸入衣料雑貨店は、アジア圏からの仕入れ値が今春から1割程度上がったものの、多くの商品で価格転嫁できていない。担当者は「値上げすると、ネット販売業者に太刀打ちできない。地域の小店舗ではもはや対策のしようがない」とうなだれた。
(経済部・駒木千尋、浜松総局・白本俊樹)