静岡人インタビュー「この人」 菅谷昌司さん 外来種問題に関する絵本を出版した
昆虫研究家。県ホタル連絡協議会長として、ホタルが生息できる環境づくりに奔走する。文芸社から出版した2冊の絵本では、外来種のアカミミガメを主人公に、生物の存在意義を提起した。69歳。
―本に込めた思いは。
「外来種が悪者扱いされていることに違和感を抱いていた。生態系に問題があることは十分に承知しているが、もともとは人の手によって持ち込まれた生き物。外来種を排斥して人の行為を正当化しようとする風潮に一石を投じたかった」
―反響はあったか。
「読み聞かせグループや環境保全活動に熱心な企業から問い合わせがあった。メッセージ性の強さが響いたようだ。出版をきっかけに、化学薬品メーカーとの協業が実現した。多様な生き物が共存できるビオトープの整備をサポートする」
―改正外来生物法が成立した。どう受け止めるか。
「規制適用を一部除外する枠組みができたとしても、飼育されているアカミミガメやアメリカザリガニが自然界に放流されてしまう事態を危惧する。殺処分が推奨される流れになることへの懸念もある。ひと昔前は、ザリガニ釣りは子どもにとって格好の遊びだった。自然環境を乱す悪者だから殺してしまえという考え方は、子どもたちにあまり良い影響をもたらさないのではないか」
―どのような対応が望ましいと考えるか。
「外来種は自然が失われた都会の片隅で我慢強く生きている存在だ。駆除しても在来種が戻ってくるとは考えにくい。全ての生き物は、それぞれがほかの生き物と関わり合いながら生きている。あるがままに足元の環境を守っていくべきだ」
(掛川支局・高林和徳)