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社説(8月2日)浜松市の区名公募 郷土見つめ直す好機だ

 浜松市は2024年1月1日を目標に現行の7行政区を3区に再編するのに伴い、新たな区の名称の公募を始めた。市内に住む小学生以上であれば、専用の用紙や郵便、スマートフォンなどで応募できる。区名の選定を、小中学生や若い世代が身近な行政に参画する貴重な機会としたい。
 近年、政令市に移行した新潟、岡山、熊本市などは公募を経て、東西南北といった方角を区名に採用した。地理的な位置の明示は市民理解を得やすい。一方、浜松市が行政区再編に関して行った市民の意見募集では「方角は無機質に感じられる」「静岡市(葵、駿河、清水区)のような区名がいい」などの意見も寄せられた。
 募集は8月25日までで、浜松市や市教委は学校を通じ、応募フォームを電子メールなどで保護者に送る予定だ。夏休みから秋にかけての選定時期に合わせて、郷土について学び、考える時間を学校や地域で設けてほしい。歴史に由来する区名、地域の将来を思い描く区名、親しみやすい区名などさまざまな発想があっていい。家族で、郷土の歴史や文化を見つめ直し、将来を展望する好機と捉えたい。
 新たな3区のうち、現状の区域のまま存続する天竜区(人口約2万7千人)は区名を変更しない。市は中、東、西、南区と北区の三方原地区を統合する新区(61万4千人)と、北区の大部分と浜北区を合わせる新区(15万8千人)の区名候補を募る。
 公募では現在使用している区名は除外する。新たな区内で地域間の軋轢[あつれき]が生じる事態を避けるためだ。市民が応募した案を市の審議会が数点に絞り込み、9月下旬から改めて市民による投票を行う。審議会の最終案決定は10月下旬から11月上旬を見込む。投票数の公表や審議内容の公開など、選定過程の透明性を高める姿勢が不可欠だ。
 区名は住居表示など市民の生活に直結する。政令市移行に向けて05年度に行った公募では「うなぎ区」「みかん区」などの特産品や、「万葉区」「徳川区」といった歴史にひも付くアイデアも見られた。
 浜松市は05年の12市町村合併を経て07年に政令市に移行し、旧市町村域に配慮した7区を設置した。少子高齢化の加速や税収先細りが予想される中、行財政改革の柱として行政区再編が浮上し、10年以上をかけて3区への再編を決めた。この間、住民投票が行われ、市議会と市、地域代表による協議が進められた。区名の選定は、こうした手続きの締めくくりに当たる。市民参加で、将来像の議論につなげたい。

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