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テーマ : 社説

社説(7月31日)新型コロナ対策 5類検討 首相が主導を

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は感染「第7波」に対する緊急提言を公表し、「コロナを一疾病として日常的な医療提供体制の中に位置付ける」ための検討を求めた。新型コロナの感染症対策を季節性インフルエンザと同様の「5類」にすべきとの議論を踏まえた。
 感染症法で新型コロナは結核などと同じ「2類相当」の位置付けで、厳格な隔離対応を義務付けている。診療や治療ができる医療機関は限られ、発熱外来や検査所に行列が生じるのはこのためだ。軽症、無症状患者の対応に追われ救急外来や一般診療を停止する医療機関が出るのは第7波に限った事態ではない。一方、大多数の自宅・施設療養者が受ける医療的ケアは限定的で、制度のほころびは至る所で露呈している。
 政府の施策を科学的観点でアドバイスする分科会がコロナ対応の法的枠組みの見直しに言及した意義は大きい。政府は後手に回ることなく検討を開始すべきだ。
 静岡県議会の自民改革会議とふじのくに県民クラブは逼迫[ひっぱく]する医療提供体制の現状を踏まえ、川勝平太知事に5類への移行検討を国に働きかけるよう緊急要望を行った。分科会の尾身茂会長はNHKの討論番組で「体制をオミクロン型にシフトしていくことが重要」と説明し、山際大志郎経済再生担当相は「議論は今すぐやれということなので、やりたいと思っている」と応じている。実行あるのみで、岸田文雄首相は医療保険制度を再構築する決意で議論を主導すべきだ。
 2類から5類への制度変更の検討では、緩和すべき規制と、維持・強化すべき対策を医療現場や自治体の要望を吸い上げて明確化したい。地方では病診連携を軸としたかかりつけ医の機能強化が喫緊の課題になっている。
 全国知事会は政府の基本的対処方針が実態に合わなくなっていると指摘した。地域の感染実態に応じて効果的な対応策を講じることができるよう、政府が対策をメニュー化し、自治体が選択する仕組みを提案した。それには国の危機管理機能の強化が欠かせず、米疾病対策センターをモデルに岸田首相が打ちだした「日本版CDC」の創設を急ぎたい。
 政府は濃厚接触者の待機期間を7日間から5日間に短縮した。2回続けて陰性が確認できれば最短で3日目に解除する。待機者の急増が社会経済活動に弊害をもたらしているためだ。短縮に異論がある一方、待機期間そのものを廃止すべきとの声がある。今回の政府対応は、社会全体に感染源が拡散する中、慎重な日常生活を送っていても感染する確率と、陰性が確認された濃厚接触者がなお感染源となり得る確率を比較検討した。
 静岡県内の年代別感染者数は全年代で増えている。ワクチン接種が限定的な若年層ほど増加が急激で、10歳未満と10代は100人に1人の割合で感染した。40代以下が全感染者の8割を占める。ワクチンの3回目接種率は50代以上でほぼ8割を越えるものの、20、30代は約5割、10代は約3割にとどまる。接種率を上げるためには、各年代に応じ、接種効果を丁寧に説明する姿勢が欠かせない。
 尾身会長は「ウィズコロナで社会経済活動をどう動かしていくかというステージに入っている」と述べた。ワクチンと検査、治療薬がコロナ禍克服のかぎを握る。関心の高い塩野義製薬が開発した軽症コロナ患者向け飲み薬は緊急承認が見送られた。ウイルス量を減らす薬効があり、安全性に目立った問題はなかったが、審査データが不十分だったという。制度の分かりにくさが際立つ。
 行動制限が必要ないとする政府方針は、これまでの対策が必要でなくなったということを意味しない。国民の地道な感染防止対策が必要であることに変わりはない。

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