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伊豆山の復興まちづくり計画 持続可能な地域の道標を【湧水】

 昨年7月の大規模土石流で被災した熱海市伊豆山の復興まちづくり計画の策定作業がヤマ場を迎えている。市は8月末までの策定を目指し、被災者らのワークショップ(WS)や個別ヒアリングで上がった声を計画に反映させたいとしている。ただ、計画のたたき台はまだ漠然としていて、具体的な将来像を共有できる段階には至っていない。被災者の生活再建はもちろんだが、持続可能な地域の道しるべを一日も早く導き出してほしい。
 復興まちづくり計画は、被災地を中心とした伊豆山地区の土地利用や基盤整備の具体的な方向性を示す。22日に行われた復興計画検討委員会で、市は「あくまでイメージ」としながら、被災地の模型を使って被災者向けの公営住宅や公園、集会所などの配置案を説明した。地域の需要や必要性に応じて、被災者向けの集合住宅や狭い道路の拡幅なども検討したいとした。
 伊豆山の急峻(きゅうしゅん)な地形は変えようがない。それでも土石流で分断されたコミュニティーを再生させるためには安全で快適な住環境の整備が不可欠だ。委員からは、同報無線に頼りがちだった情報伝達や安否確認などで重要になる住居表示の改善を求める意見が上がった。
 「災害を機に」と言うと誤解を招くかもしれないが、地域の未来を考える今だからこそ、長年横たわっていた課題を解消する機会にしたい。
 一方、5月から月1回開かれているWSでは、生活環境や子育て支援などについて住民が意見を交わしている。市はできる限り意見を計画に反映させたいとしているが、どのような過程を踏んで反映するかは不透明だ。
 参加者からは「このままでは不満を持った被災者のガス抜きにしかならない」との声が聞かれる。実現が難しい要望もあろうが、行政は一つ一つを放置せずに、なぜ不可能なのか、どうすれば実現可能なのかを説明する責任がある。
 今は伊豆山を離れて暮らす被災者の生活再建が最優先課題かもしれないが、50年、100年先を見据えた計画にしてもらいたい。
 (熱海支局・豊竹喬)

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