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テーマ : 教育・子育て

中学部活動改革 静岡市が検討委「拠点校式」「シズカツ」両輪

 スポーツ庁の有識者会議が公立中学で休日の運動部活動の指導を地域のスポーツクラブや民間事業者に委ねる「地域移行」を提言したのを受けて静岡市は7月、地域の実情に合った持続可能な部活動を実現しようと改革検討委員会を立ち上げた。委員会で市が提示した計画では2026年度から平日の部活動は複数校の生徒を一校に集めて教員が指導する「拠点校式」に改め、休日は地域住民などから指導員を招いた地域展開部活動「シズカツ」として実施する。

公立中学校の部活動改革に向けて拠点式の実証実験が行われている蒲原、由比両中学校サッカー合同チーム=9日、静岡市清水区の由比中
公立中学校の部活動改革に向けて拠点式の実証実験が行われている蒲原、由比両中学校サッカー合同チーム=9日、静岡市清水区の由比中

 9日早朝、静岡市清水区の由比中グラウンドでサッカー部員たちが練習に励んでいた。生徒の服装は「KAMBARA」と書かれたオレンジ色のシャツと「YUI」の白いシャツ。蒲原、由比の両中学校の生徒が入り交じり、準備運動をしたり、ボールを追いかけたりしていた。市が4月から行っている部活動改革の実証実験だ。
 由比中はサッカー部員が対外試合可能な11人を満たしていなかったが、隣接する蒲原中と組むことでメンバーが増え、さらに蒲原地区に住むサッカー経験者がコーチをすることで充実した練習が可能になった。実証実験は指導者不足や部員減少を解消し、学校の規模に関係なく部活動の多様な選択肢を生徒に提供する狙いがある。
 有識者会議が生徒が参加する活動を民間のスポーツクラブなどに委任する「移行」を提言しているのに対して、市は行政が主体となって部活動を管理し、地域人材などと協力する「地域展開」を想定する。生徒の受け入れ先となる民間団体が少ないためだ。
 市はシズカツについて「指導者に発生した事業運営上の事故等に関する責任は市が負う」との運営方針も示す。指導者役は教育方針などについて研修を受けた地域住民や参加を志願する教員を想定している。
 市教委の部活動改革の特徴は、教員の労働環境改善よりも子どもの活動機会の維持を主眼に置くことにある。市学校教育課の担当者は「部活の指導者不足が深刻化し、今のシステムのまま部活動継続は困難」と話す。
 19年市の調査では、顧問が競技を経験している割合は49%だった。学校部活動は技能向上のみを目指すものではないとはいえ、安全上懸念があり、高みへと挑戦する生徒にとって物足りない活動内容になってしまっているのが実態だ。
 少子化の影響も大きい。16~20年の5年間で、由比中野球部など42部が廃部・休部となった。半数以上の23校では部活数が10部以下となっている。
 市教委が21年に小学6年生1371人を対象にした調査では、3人に1人が「やりたい種目が部活にない」と答えた。部員数についても20年時点で351部中81部が10人以下と大会参加や多様な練習が難しくなっている。各校単独の部活動のままでは生徒の挑戦や意欲に応えられない現状がある。
 今後の課題は、子どもや地域住民への周知と地域に住む競技経験者である部活OBOGの協力の確保だ。シズカツや拠点校式は結果的に母校の部活動をなくす取り組みでもあり、理解を得るには困難も予想される。改革の必要性と効果を丁寧に説明し納得を得る努力が求められる。
 (蒲原支局・マコーリー碧水)

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