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テーマ : 浜松市

浜松中心街 空き店舗を「スクール」に 卒業生らが考える【決める、未来 若者@まちづくり㊥】

 2001年に経営破綻した百貨店「松菱」跡地が更地のまま残り、シャッターを閉じた商店が見られる浜松市中区の中心市街地。郊外に大型商業施設が増え、中心街の空洞化という全国共通の課題を抱える。市は空き店舗を改修して新たな事業を起こす「リノベーション」を支援する。再生に取り組む若い世代に、官民連携のまちづくりの成果を尋ねた。

空き店舗をリノベーションして開店した「みかわやコトバコ」でメンバーと交流する大端将さん(左)=6月下旬、浜松市中区
空き店舗をリノベーションして開店した「みかわやコトバコ」でメンバーと交流する大端将さん(左)=6月下旬、浜松市中区

 中心街の活気低下はデータを見ても深刻だ。市が実施した調査によると、松菱跡地前の休日の歩行量は昨年までの20年間で約6割も減った。市は郊外の大型店とは違う魅力を中心街につくり出そうと、14年に「リノベーションスクール@浜松」を開講し、空き物件への新規出店者の支援に力を注ぐ。
 松菱跡地から北へ650メートル、浜松市役所にほど近い中区尾張町の二俣街道沿いにあった旧雑貨店を再生し、20年8月にオープンした複合店舗「みかわやコトバコ」。若者や学生が集まり、それぞれ食堂や製本所、家づくり相談など多彩な事業に取り組み、交流の輪を広げている。
 「街を自分で変えられると思っている若者は少ない。でも店を持つなどすれば、街の人々に連携を働きかけることができる。自分から動いて、地域の人々を巻き込んだ活動ができれば」。スクール修了後に「みかわや」を立ち上げた大端将さん(36)=千葉県出身=は意欲的だ。
 街はみんなでつくるもの。仕事として居場所をつくりたいなら、具体的なビジネスプランを考えて動かしていけば、自然と自分の居場所になる-。そう考える大端さんを中心として、「みかわや」では多世代の交流が生まれつつある。
 大端さんは空き物件のオーナーと対話を重ね、「事業が軌道に乗ったら家賃を上げてほしい」と提案。最初は安い料金で賃貸契約を結び、事業が順調に進んだ今は徐々に家賃を上げているという。旧雑貨店を貸したオーナー神谷卓志さん(60)は「大端さんは街を活性化させたいという意識を持っていたし、頑張ってほしいという応援の気持ちで了承した。街の活性化につながっていると思う」と期待を膨らませる。
 「みかわや」でプログラミング教室を開く静岡大大学院生の丸山健斗さん(23)は「地域の大人たちと出会い、浜松で暮らしているという実感が湧いた。人と人がつながる場所が増えると面白い」と活動の魅力を語った。同大大学院生の米田凌さん(25)も「街の魅力づくりを目指す市民の活動を、行政が先導してくれれば」と求めた。

 リノベーション 既存の建物を改修し、新たな機能や価値を加えて再生する取り組み。浜松市中心市街地の空き店舗区画数は2021年度で109区画で、19年度から約1.6倍となっている。市は街中に散在する空き店舗などを開業の意欲がある人に紹介し、ノウハウを指導するスクールを開講してきた。現在8年目で、卒業生は200人近い。個人向けと企業向けの両スクールがある。

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