路線価 明暗くっきり 熱海・観光復活/沼津・商都衰退
1日公表された静岡県内13税務署の最高路線価(1月1日時点)は、下落や横ばいの地点が過半を占める中、市街地活性化や投資呼び込みを進める熱海、三島両税務署管内の駅前地点の上昇が目立った。一方、長年にわたり県東部トップの路線価を維持してきた沼津市(JR沼津駅南口周辺)は熱海市にその座を明け渡し、明暗が分かれる格好になった。
伊豆中央道沿いでドライブインを経営する仲原商事(伊豆の国市)は4月、県東部で最高額の1平方メートル当たり27万円と算定された熱海市田原本町の平和通り商店街に「いちごプラザ大福や熱海駅前店」を開いた。看板メニューのいちご大福を売り出していく。
「5年ほど前から出店を目指してきた。念願がかなって空き物件に入る機会に恵まれた」と仲原孝彦店長。商店街に出店したことで、従来以上に観光客や地元住民の購入が見込めるという。
同市の中心街付近では、新型コロナウイルス禍で低迷した観光業の回復に向け、若い世代をターゲットにしたスイーツ店や飲食店が開業したり、土産物店が改装したりする動きが相次ぐ。仲原店長も「行政と地域が一体となって、観光産業を盛り上げようとしている点も出店動機になった」と話す。
一方、沼津市では昨年、JR沼津駅近くの大型商業施設が閉店。今年5月には人気アニメの聖地として親しまれた沼津仲見世商店街の書店も撤退した。沼津商工会議所の幹部は「中心市街地の衰退が激しい。路線価もいずれは周辺都市に抜かれると覚悟していた」と語る。
起死回生の期待が掛かる鉄道高架化事業は当初計画から大幅に遅れ、ようやく動き始めたばかり。事業に伴う駅前再開発はまだ具体化できていない。この幹部は「当面は新たな投資を呼び込めない。このままでは街の魅力はさらに失われる」と焦りを募らせる。
(経済部・平野慧、薮崎拓也)