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テーマ : 裁判しずおか

袴田巌さん保佐人、弁護団から追加選任 東京家裁、姉高齢を考慮 

 旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直しを求めている元プロボクサー袴田巌さん(86)の保佐人に弁護団の弁護士が東京家裁から追加で選任されたことが29日、関係者への取材で分かった。袴田さんの姉ひで子さん(89)が既に保佐人で、再審の請求人にもなっているが、高齢であることを考慮した対応という。
 弁護士1人が4月、保佐人に追加で選任された。袴田さんの第2次再審請求は東京高裁で差し戻し審が続いているが、新たに保佐人に選任された弁護士が第2次再審の請求人に加われるかどうかは再審法(刑事訴訟法の第4編再審)に規定がなく、不透明という。ただ、弁護団関係者は「保佐人は袴田さんの代理的な立場。保佐人が複数になったら、請求人も追加されるべきと考える」と指摘する。
 事件は30日で発生から56年。袴田さんの差し戻し審はヤマ場を迎えているが、今後出される高裁の可否決定に対して検察や弁護団が最高裁に特別抗告すれば、さらに長い時間を要する。
 三重県名張市で61年に女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」では、再審を請求していた奥西勝元死刑囚が89歳で死亡した約10日後に名古屋高裁が審理の打ち切りを決めた。弁護団関係者は「ひで子さんが元気なうちは再審請求を続けられるが、(保佐人を務められなくなる)万が一の時には打ち切られてしまう」と懸念し、袴田さんの保佐人を追加した理由を説明する。
 ひで子さんは2009年3月、東京家裁から保佐人に選任された。同家裁は決定で「袴田死刑囚には拘禁反応と呼ばれる精神の障害があり、保佐開始が相当」と説明し、死刑囚に初めて成年後見制度を適用した。

再審請求権者の拡大課題

 規定の乏しさから改正を求める声が強まる再審法を巡っては、再審請求権者の拡大も喫緊の課題だと言える。
 現状では、再審請求できるのは①検察官②有罪の言い渡しを受けた人③❷の法定代理人と保佐人④❷が死亡した場合などは配偶者や直系の親族・きょうだい―に限られている。
 例えば、ハンセン病患者とされた男性が隔離先の特別法廷で死刑判決を受けて執行された「菊池事件」では、男性の遺族がハンセン病による差別を恐れ、再審請求を拒否せざるを得ない状況にある。
 日本弁護士連合会は2019年の報告書で「親族が死後再審を引き継ぐ事例の方が珍しい」と指摘。請求人が高齢化している再審弁護団への調査では先行きに大きな不安を感じているとして、各地の弁護士会長などを公益的請求人にする制度の創設や請求人が承継人を指定できるようにすべきと提案している。

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