50年後の日本を考えよう お笑いジャーナリスト・たかまつななさん【決める、未来 若者×若者ー1票の価値とは①】
若者の低い投票率を向上させる方策はあるのか―。若者を対象にした教育・啓発や政治参加の活動に取り組む20、30代の5人に、同世代の静岡新聞社記者が取材した。初回は「若者が投票に行きたがらないのも無理はない」と考える文化生活部の遠藤竜哉記者(35)がお笑いジャーナリストたかまつななさん(28)に聞いた。
そもそも、なぜ若者の投票率を上げることが重要なのだろうか。
「今の政治は5年後の将来を語れても50年後は語ってくれない。日本で100歳まで生きるイメージが湧かない人は多いと思う」
なるほど。政党が目指す社会の姿は本来違うはずで、選挙で議論されるべきだが、語られるのは数年先のことが中心だ。「投票率が高いのも高齢者、政治家も高齢者で、仕方ないかもしれない。それでも若者が投票に行くことで変わってくるはず」とたかまつさん。
自分の一票で変化を起こせる期待値が低いと感じれば、わざわざ出掛けようとは思わないだろう。ただ、10年、20年後に後悔がないよう、いま最大限行動してほしいとも願う。
今回改めて気付いたことは、主権者には「誰かがなんとかしてくれる」「サービスは受けるものだ」という依存の感覚から脱却し、当事者の自覚を持つことが必要という点だ。
ただ、たかまつさんいわく「世代間格差によって若者は高齢者より貧しいのに、それが現実だと納得し、自己責任論が強まっている」という。それぐらい若者にとって政治は信頼度がない。「いわゆる老後資金2千万円問題があった時も若者はそれほど怒っていなかった。その程度の負担は当たり前という感覚だった」
確かに、日本では若者が声を上げて何かを勝ち取った歴史が少ない。「例えば、選挙権や成人年齢の18歳への引き下げも若者が声を上げた成果ではない」とたかまつさんは指摘する。投票率向上には、成功体験が不可欠かもしれない。
「状況を一変させる可能性を秘めるのはインターネット投票だ」。実現を求める声が高まり、たかまつさんも2025年参院選での導入を求める署名活動をSNS上で始めた。「実現しそうなのに、世論、特に若者による一押しがないのが惜しい」
投票は自分の将来を考えるきっかけになる。若者だけではない。皆さん自身のため、大切な権利を行使してほしい。
たかまつ・なな 横浜市出身。慶応大大学院政策・メディア研究科、東京大大学院情報学環教育部修了。小学生の時にアルピニスト野口健さん主催の富士山での「環境学校」に参加して社会問題に関心を持ち、中学・高校時代に全国紙の子ども記者も経験した。大学生の時にお嬢様芸人としてデビュー。時事ユーチューバーとしても政治、教育の現場を取材。社会問題を若者に伝える。
〈記者略歴〉えんどう・りょうや 2009年静岡新聞社入社。豊橋支局長などを経て、21年から文化生活部記者。静岡市清水区出身。
■投票率向上キャンペーン「決める、未来」
静岡新聞社は、若年層の投票率が低い状況を社会的な課題と受け止め、若者投票率向上キャンペーン「決める、未来」を展開します。「なぜ若者はあまり投票に行きたがらないのか」「どうしたら政治への関心や期待を高められるか」といった疑問への答えを探るため幅広い人々に取材し、新たな視点の企画を掲載していきます。