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社説(6月17日)リニア期成同盟会 地域の不安解消 支援を

 リニア中央新幹線の沿線9都府県でつくる建設促進期成同盟会に川勝平太知事が加盟を申請した。会長の大村秀章愛知県知事に書類を手渡した。大村知事は早期全線整備を目指す会の趣旨への全面的賛同を加盟の条件に挙げ、可否に対する会員の意見を聞くと説明した。
 加盟申請は2019年に続き2回目。川勝知事が自民党本部の特別委員会に参加した際、古屋圭司委員長が加盟を促した。19年当時は静岡県の建設促進の立場が不明確と判断され、認められなかった。
 インフラの整備促進を中心に、全国各地に官民の期成同盟会がある。地域の声を国政に届ける役割を担ってきたが、推進の旗を振るだけではその機能を十分に果たせない。利害関係者が多岐にわたる大型事業ではなおさらだ。リニアの期成同盟会はホームページで沿線情報を公開し、都府県の決議や要望書には「地下水・土壌汚染対策をはじめとする具体的な環境対策」(岐阜県)などの記載もある。各地域の不安解消を支援する役割にも注力してこそ、事業推進の原動力になる。
 川勝知事は再申請書で「基本姿勢が整備の促進であることを改めて申し上げる」と明記し、水資源や生物多様性などの影響回避の対話を国と協力して進めていくとした。一方、大村知事は定例記者会見では「いきなり紙を持ってくるとは思わなかった」「肝心の静岡工区について建設促進と書かれていない」と批判的で、両知事の関係はぎくしゃくしたままだ。
 大村知事はこれまで「JRから出てきた水を全量大井川に返すから科学的に問題ないと聞いている」と述べ、トンネル工事の着工を認めない静岡県の姿勢を問題視してきた。9都府県の総意なのかは不明だが、利水者の反発を招く表現だ。期成同盟会はむしろ、本県を招き入れ、議論が長期化している原因を理解することが早期開通の近道だと理解してほしい。
 川勝知事は、国交省が主体となって進める生物多様性会議の開催に当たり、山口壮環境相に対し、環境省が主体性を発揮するよう文書で要請した。南アルプスはユネスコエコパーク(生物圏保存地域)に登録され、環境保全に向けた難題が山積する。環境省の関与は必須で、むしろリーダーシップを発揮すべき立場と言える。
 期成同盟会はリニアが国家プロジェクトだと説明し、岸田文雄首相は早期の全線開業に必要な指導、支援をすると約束した。ならば、政府は省庁の縦割りを排除し、総力を挙げて地域の課題解決に努めるべきだ。

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