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高校再編計画再検討へ意欲 池上県教育長インタビュー

 静岡県教委が本年度に新たに設置する「県立高の在り方検討委員会」は、県立高の再編案を盛り込んだ第3次長期計画(2018~28年度)を再検討する。再編対象校のある小笠、沼駿の2地区と賀茂地区には地域協議会を設け、高校の将来像を地域と議論する。4月に就任した池上重弘県教育長に、高校再編の現状認識と、今後の議論への思いを聞いた。

高校再編を巡る現状と、今後の議論への姿勢を語る池上重弘県教育長=県庁
高校再編を巡る現状と、今後の議論への姿勢を語る池上重弘県教育長=県庁


 -県の「地域自立のための『人づくり・学校づくり』実践委員会」で15年度から副委員長を務め、高校教育に関する提言にも関わってきた。公立高の志願者が減っている現状をどう見るか。
 「少子高齢化社会の現実として、今後若者の人口が増加に転ずることはないだろう。長泉町のように社会増がみられる自治体は限定的。大学は従来のマーケットだった18歳人口の減少を生涯学習や留学生で埋めようとしているが、公立高は新たな流入源を探すことも難しい。この傾向の中での戦略が前提になる。既存校を全て新しく置き換えるのは困難だ。長期計画が想定する10年先には、公立高のラインアップは現在と異なるだろうし、時代に応じ変えなければとも考えている」
 ―私立高との競合にも直面している。公立高の課題は。
 「近年徐々に私立入学者の割合が高まっている大きな要因は、やはり授業料の実質無償化だろう。また、トイレや水回りなど施設面の課題もある。子どもたちにとって、公立高の古い施設は日常生活と比べても見劣りする状態。教育課程や進路実績など学校の本体部分で勝負するのは当然だが、施設面の魅力の差も無視はできない」
 ―本年度、長期計画を再検討する理由は。
 「新たな在り方検討委で、一度統合ありきではない立場で基本方針を考えたい。現計画を定めた18年以降、新型コロナウイルスやICT活用、SDGsの浸透など、世界規模の変革が当時の想定を超える影響を与えている。また、再編案が地元への相談なく決まったため反発を招いたという経緯もある。その反省も踏まえ、現状に合った方針を検討する。結果的に再編案を見直すかもしれないし、計画通り統合するかもしれない。私自身もいろんな選択肢を考えているが、議論を誘導するつもりはない」
 ―地域協議会の位置付けは。
 「従来は再編対象校ごとに協議会があったが、その地域を含め、対象校に深い関わりを持つ市町の首長や地元企業、自治会などのステークホルダー(利害関係者)に集まってもらい、私がファシリテーションを行う。そこでの議論を共有して新たな方針に反映する。地域の関係者が一堂に会して意見交換することは、高校の今後を考える上でも重要だ。将来像が見えた時、地域の人たちがどう高校にコミット(関与)するかが次の重要なステップになる。地元企業のインターンや地域の行事を通じた学びなど、地域の関わりも共有できる場にしたい。この協議会が次の高校を支える応援団につながることを期待している」
 ―協議への姿勢は。
 「まずは『子どもたちのための議論』という視点を明確にしたい。学校への思いは人それぞれだが、学ぶのはあくまで子どもたち。今の生徒や10年、20年先の生徒の学びが質の高いものであり続けることが重要。私は議論の際に『3F』という言葉を使う。Flat、Frank、Free。上下を気にせず、率直に、自由に話そう―。これを協議会でも伝えるつもりだ。全てを実現できるとは限らないが、皆が思いを率直に述べ合った上で、その先の結論が高校を支える枠組みになってほしい。私も皆さんの意見を受け止めながら進めたい」

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