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テーマ : 裁判しずおか

原告涙の訴え「悪質な人災、責任を転嫁」 熱海土石流訴訟初弁論

 熱海市伊豆山の土石流災害を巡り、遺族と被災者らが起点の盛り土部分を含む土地の現旧所有者らに総額約58億円の損害賠償を求めた訴訟の18日の静岡地裁沼津支部初弁論。遺族や被災者でつくる「被害者の会」会長の瀬下雄史さん(54)=千葉県=が意見陳述し「違法盛り土の土石流は悪質な商行為による人災。被告たちは全員、責任転嫁論を展開している」と現旧所有者の責任を指摘した。

熱海市伊豆山の土石流災害をめぐる初弁論に出廷した遺族ら=18日午前9時50分ごろ、沼津市の静岡地裁沼津支部
熱海市伊豆山の土石流災害をめぐる初弁論に出廷した遺族ら=18日午前9時50分ごろ、沼津市の静岡地裁沼津支部

 瀬下さんは法廷で、事前に用意した意見陳述書をはっきりとした口調で読み上げた。20年ほど前、瀬下さんの両親は風光明媚(めいび)な伊豆山の景色に引かれ移り住んだが、穏やかな生活は突然の災害により奪われた。土石流に巻き込まれた母陽子さん=当時(77)=の遺体と対面したのは発災から3週間後。「母を凄惨(せいさん)な姿に変えた違法盛り土は憎く、許せない」と憤った。
 災害関連死を含め27人が死亡し、今も1人が行方不明のまま。瀬下さんは「遺族には癒えぬ悲しみや後悔の念をもたらし、被災者には生活再建という理不尽な苦しみを与えた」と涙ながらに訴えた。
 被告側は土地の現所有者の代理人弁護士らが出廷し、意見陳述書を朗読する間、メモを取りつつ耳を傾けた。
 開廷前には、原告の遺族ら約30人が遺影を手に同地裁沼津支部に向かった。被害者の会の副会長で、自宅が全壊した太田滋さん(65)は「被告側は責任がないと主張しているが、自分が何をして、何をしなかったのかを自らはっきりと言ってもらいたい。なぜこういうことが起きてしまったのか明らかにしてほしい」と訴えた。

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