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テーマ : 沼津市

社説(4月25日)頼重沼津市長再選 都市の将来像明示せよ

 沼津市の頼重秀一氏が市長選で無投票再選を果たした。1期目は、地元を推進と反対両派に二分し、地域経済再生や社会基盤整備の足かせとなってきたJR沼津駅付近鉄道高架事業を始動させる成果を上げた。
 ただ、プロジェクトが動き出した陰で、人口減対策、中心街再生、企業誘致など残された課題が山積している。2期目はこれら歴代市政が積み残してきた課題の解決に道筋を付けるとともに、鉄道高架事業に伴う都市の将来像を明示してほしい。
 周辺市町との比較でも、懸案課題への対応は成果が出ているとはいえない。人口は、若者を筆頭に底堅い長泉町に対し、20万人を割り込んだ状況が続く。現役世代を中心に転入者への思い切った優遇策を検討すべきだ。
 駅周辺を対象にした市のコンパクトシティ構想「X―Tech(クロステック)NUMAZU」では、高架化で空いた土地を有効利用したい。老朽化が顕著な市立病院と市役所を移転させても良いのではないか。
 交流人口の増加には、「沼津らしさ」を前面に出すことが有効だ。公開型の魚市場を駅前に構えれば、港町の活気と人の流れを中心街に呼び込める。手堅い政治手腕が特徴の頼重氏だが、独創的な切り口が市民に「何か変わりそうだ」との実感を与えるはずだ。
 企業誘致は富士市に後れを取る。新東名高速道インター周辺への企業立地が好調な同市は近年、アクセスの良さを売りに積極誘致を展開する。工業用地は完売が相次ぎ、さらなる進出需要から新たに土地を造成する。
 沼津市も同様に新東名、東名、国道1号バイパスを活用でき、アクセス面では引けを取らない。ただ、企業誘致の専門部署は規模が小さい。拡充の上、まずは企業ニーズを幅広く把握する必要がある。
 地元経済界では「失われた30年」という言葉をよく聞く。鉄道高架事業は1988年、当時の渡辺朗市長が中心街整備構想として表明した。しかし、推進派と反対派の対立はやまず、30年にわたり事業は一歩も前進しなかった。この間、再開発事業は停滞し、市は反対派への説得や調整に時間を要した。「鉄道高架事業でもめているまち」との負のイメージが、民間の投資意欲もそいでいた。
 頼重氏にはまず、市民に率直に厳しい現状を示し、危機感を共有してほしい。市議会も指導力が求められる。一方で市民も無投票という“白紙委任”の意思を示した以上、わが事として地元の今と将来を考えるべきだ。

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