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テーマ : 長泉町

社説(4月21日)博物館法改正 名に恥じぬ「登録館」に

 博物館の役割や要件を定めた博物館法が改正、公布された。これまで自治体や一般社団法人などに限られていた登録博物館の対象を、民間企業や学校法人が設置する施設にも広げた。
 登録館の間口が広がった一方で、都道府県の教育委員会が担う登録審査は厳格化された。改正法施行の来年4月以降、各教委は文化庁が示す新基準にのっとり、学識者の助言を得て登録の可否を判断する。各教委が運営状況をチェックする仕組みも新たに定めた。
 各教委には開館日数や施設面積といった外形的な要素だけでなく、各館の地域との関わりや活動実態、展示企画の独自性など、幅広い観点による審査を求めたい。
 登録制度は形骸化が指摘されて久しい。国内には5千以上の博物館があるが、博物館法上の登録博物館は約2割にとどまる。法改正の趣旨は、博物館に求められる役割が多様化、高度化していることを踏まえ、各館の運営の質を向上させる点にある。新登録制度の浸透が、博物館業界全体の底上げにつながってほしい。
 県内の登録館は県立美術館など27カ所。2016年、20年にそれぞれ県文化奨励賞を受けた井上靖文学館(長泉町)、沼津市芹沢光治良記念館といった、収蔵品や展示に十分な実績がありながら登録館ではない施設も多い。
 登録館数が伸びないのは、メリットが一部の税軽減などにとどまることが要因とされる。学芸員の配置や資料保管など必要な条件を備えた博物館を振興するという、制度の目的が果たされていないのが現状だ。政府や各教委は法改正を機に、制度の運用、審査基準の策定を通じて登録館の便益を増やしてほしい。
 多くの博物館は厳しい運営を強いられている。みずほ総合研究所の18年度調査によると、自治体が博物館に充てる予算はピークの1993年度に比べ、2015年度は3分の1以下に落ち込んだ。
 改正法の付帯決議には、博物館に対する財政措置拡充や税優遇策の検討への言及がある。政府や自治体は、法改正によって社会教育施設としての役割に加え、文化観光の推進も担うことになった登録博物館の支援を真剣に考えるべきだ。
 法改正前に日本学術会議が指摘した学芸員の処遇改善については、文化庁の公布通知に留意事項として盛り込まれた。学芸員の社会的位置付けは不安定で、外部資金を得る機会も十分に与えられていない。中長期的な課題として、今後も議論を重ねたい。

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