あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

社説(4月2日)JAふじ伊豆発足 持続化先導する気概で

 静岡県東部の全8総合農協が合併して「JAふじ伊豆」が発足した。20市町にまたがり、組合員16万5千人は全国3位、職員2500人は4位。農業と農協、さらに地方の持続化を先導する気概を持って前進してほしい。
 富士山、伊豆という抜群のブランド力がある。漁業者と連携して域内観光業に食材を供給するなど、地域資源活用の最大化を新機軸にできないか。名称にふさわしい意気込みを期待する。
 当面の本店は旧JAなんすん本店(沼津市)だが、新本店予定地を東名高速沼津、新東名長泉沼津インター近くに確保した。農畜産物を販売するファーマーズマーケットを併設する構想は、消費者と直接交流する場として実現を求めたい。伊豆の玄関口として、水産物の販売も検討できないか。
 合併協議は2019年夏に本格化し、新型コロナウイルス感染状況をにらみながら進められた。外食需要が落ち込む一方で、地元産品への消費者の関心の高さを確認できたのは地産地消推進に追い風を感じたろう。
 仕事とリフレッシュを兼ねた「ワーケーション」の中に農業体験を取り入れる可能性への気付きもあったのではないだろうか。これらの経験を地元市町の農業振興策やUターン、移住促進策と連動させれば効果的だ。
 農畜産物販売や営農指導などの本来事業の赤字を金融事業の収益で補塡[ほてん]する経営モデルが長引く低金利で先細りになり、全国の農協が改革に取り組んでいる。県東部地区8農協管内はこれに加えて狭い農地が多く、高品質の産品も単独農協では出荷量がまとまらず販売事業のネックとなっていた。
 8農協の貯金残高合計は全国2位だが、販売額は50位にも入らない。新農協は合併3年目の販売額を約20億円増の188億円と目標設定。販売拠点のネットワーク化の成果に注目したい。
 食料・農業・農村基本法に沿って5年ごと策定される基本計画は20年、規模拡大など生産性向上に突き進んでいた方針を一部改め、食料安全保障や飢餓撲滅の観点から国連が求める「家族農業」重視の考え方を盛り込んだ。
 農協は元来、農家の助け合い組織で、地域での役割は大きい。経営改革で農家所得向上を目指すことは重要だが、健康や生きがいのために汗を流す生産者への目配りを忘れてはならない。
 8JAは支店統廃合などスリム化を進めて合併準備を進めてきた。しかし、成果を挙げている新規就農者や後継者の支援事業などは、これを機にむしろ拡充すべきだ。新農協の持続化策はそのまま20市町の持続化策になる。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ