メガソーラー事業 計画着々、高まる不安【迫る 函南町長選㊤】
大規模土石流が起きた熱海市伊豆山から西へ約5キロ。函南町軽井沢地区の箱根山麓で約10万枚のソーラーパネルを設置する計画が進んでいる。事業面積は東京ドーム13個分にもなる65ヘクタール。南北に走る活断層の真上に雨水をためる巨大な調整池が建設され、沢の下流に広がる丹那盆地には小学校や住宅が並ぶ。

「調整池が崩れたらひとたまりもない」。地元で反対運動を展開する「丹那の自然と生命を守る会」の近藤直子さん(49)は、4年前に突如浮上した大規模太陽光発電所(メガソーラー)建設計画の危険性を訴える。崩落した土砂が沢を下って集落を飲み込めば、多くの犠牲は避けられない。現地を訪れた地質学者も「この場所だけは危ない」と警鐘を鳴らす。
今月9日、軽井沢地区の一部住民に、同事業の開発業者から手紙が送られてきた。施設の運転開始から15年にわたり無料バスを地域に運行させる―。高齢化が進む同地区に対し、業者は「一つの地域貢献として提案させてもらった」と語る。一方、近藤さんは「餌で釣るようなまね。住民をばかにしている」と不信感を募らせる。
町も事業には「不同意」の姿勢を示してきた。町長の同意なしに施設の設置を禁じる町条例を適用し、違反すれば電力の固定買い取り制度(FIT)を所管する経済産業省へ通報する構えだ。昨年8月に提出された計画の変更届に対し、条例に基づく不同意を初めて通知した。
森林管理の必要性を訴える声もあり、過疎化が深刻な山間地の課題は山積している。着々と進むメガソーラー計画への不安をはじめ、行政がいかに住民の思いに寄り添えるか。町長の手腕に寄せられる期待は大きい。
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任期満了に伴う函南町長選(22日告示、27日投開票)が迫る。町の課題を探った。
■立候補予定者
仁科喜世志氏(71)
治山治水上の大きな危険をはらむ。当初からの不同意を貫く。
土屋学氏(54)
基本は反対だが、交渉し、計画が進むのであれば最善策を探る。
塩谷敬治氏(66)
自然破壊になるので反対。できることは何でもやる。