超小型衛星で地球撮影 原田精機(浜松)など開発「KITSUNE」 ISSから放出、商業利用探る
人工衛星部品などを製造する浜松市北区の中小メーカー原田精機は16日、同社初の超小型人工衛星を産学連携で開発し、3月中に国際宇宙ステーション(ISS)から地球の周回軌道に放出する計画を発表した。主流の超小型衛星の規格より一回り大きなサイズを低コストで実現。高精度の望遠鏡や高速通信機器を備え、高度約400キロから地球を観測する実証実験を行う。

衛星は縦約10センチ、横約20センチ、奥行き約30センチの直方体で重さ約8キロ。既に打ち上げてISSに輸送済み。世界各国が打ち上げている超小型衛星の倍の容量を確保し、従来より大型の撮影機器の搭載を可能にした。
2019年から電子機器開発のアドニクス(東京都)、九州工業大(北九州市)と開発を始めた。プロジェクトの幹事を務める原田精機は、望遠鏡などの撮影機器を開発。市販のレンズを使ってコストを抑えたほか、宇宙の過酷な温度変化の影響を踏まえ、部品の配置や材料を工夫した。
同サイズの衛星の相場は2億円台半ば以上とされるが、同社は将来、2億円程度での販売を見据える。
関係団体などの頭文字を連ね、「KITSUNE(きつね)」と命名した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)などとの調整が整い次第、ISSの日本実験棟「きぼう」から宇宙空間に放出し地球を1周約90分で周回する。地球を撮影した静止画は公式ホームページで公開する予定。地上の自動車の有無が判別できる高画質で撮影できるという。
同社は今後、同衛星の商業利用のアイデアを練る。原田浩利社長は「人工衛星に求められる機能が高度化しているため、このサイズが今後の世界の主流になるだろう。例えば記念撮影に使うなど、人工衛星をもっと生活に身近なものにしたい」と意気込んだ。