⚽死力尽くす一戦 静岡ダービーとは【SBSアナウンサー対談㊤】
2022年のJリーグが開幕した。26日には3季ぶりとなるJ1磐田、清水の静岡ダービー(エコパスタジアム、午後1時半キックオフ)が迫る。今回のダービーは「静岡新聞SBSマッチ」。SBSはテレビ、ラジオで実況生中継する。ラジオで「ダブル実況」を担当する大石岳志、岡村久則の両アナウンサーとダービーの歴史や魅力、今回の試合の注目ポイントなどを掘り下げた。進行はSBSテレビ「みなスポ」担当の山﨑加奈アナウンサー。(企画・制作/静岡新聞社編集局未来戦略チーム、静岡放送編成業務局アナウンス部、静岡新聞SBSイノベーションリポート実行チーム)
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山﨑加奈 私は入社3年目で静岡ダービーは2019年しか知らなくて。今回3年ぶりの対戦が迫ってきて、周りの盛り上がりに改めてびっくりしているところです。大石さんは初のダービーの時、すでにアナウンサーとして活躍されてましたよね。
大石岳志 1993年10月16日、当時のナビスコ杯予選リーグでの対戦が初の公式戦での「ダービー」でした。杉本雅央選手(93〜96年在籍)と内藤直樹選手(92〜95年在籍)の得点で最初のダービーは清水が制しました。激闘を物語るように警告が両チームに4枚ずつ、磐田はカルロス・アルベルト選手(前身ヤマハ発88年〜93年在籍)が退場にもなり、相当エキサイトした試合だったなというのを覚えています。
山﨑 岡村さんは、出身は愛知県名古屋市ですよね。静岡に来て、ダービーの盛り上がりをどう感じていましたか。
岡村久則 ダービー以前にまず静岡のサッカー熱に面食らいましたよね。月曜日に出社すると、周囲の誰もが週末のJリーグについて語っていました。「ボランチのポジショニングがどうだった」とか、「DFラインのコントロールが甘かった」とか。野球実況を志しアナウンサーを目指した私には当初、全然付いていけず。これはとんでもない所に来てしまったなと思いました(笑)。でも取材を重ねるうち、みるみるサッカーに引き込まれました。伝説のJリーグチャンピオンシップをスタジアムで体感し震えたのは入社2年目、99年でした。
大石 日本一を県勢2チームが争うたまらない試合でした。私はラジオ実況という立場であの大一番に立ち会っていました。
岡村 私もその時の雰囲気、今でもはっきり覚えています。普段はお祭り的な雰囲気もあるダービーですが、あの試合は勝負へのこだわりがサポーターにもあふれていました。個人的には第2戦、沢登正朗選手(93〜2005在籍、現清水ユース監督〉が直接フリーキックを決めたあの瞬間、気迫あふれる姿にぞくっとしました。 ああいう熱戦をまたダービーで見たいです!
山崎 チーム、選手にとってもダービーは特別なんでしょうね。
大石 まさに死力を尽くす戦い。その時の順位や、そこまでの調子なんて関係ない。意地でも負けたくないという思いをひしひしと感じます。
山﨑 鹿児島キャンプ中の今年2月1日に行われた練習試合で両チームは対戦し、この時は磐田が勝利しましたね。
岡村 練習試合だから関係ないと思うかもしれませんが、両チームはそうは思えない。J3松本の名波浩監督は14〜19年の磐田監督時代、「清水にはじゃんけんだって負けるな」と選手にハッパを掛け、ライバル意識を持たせていました(笑)
山﨑 ダービーで印象に残っている選手はいますか?
大石 ダービーで活躍する選手を「ダービー男」と言うんだけど、磐田だと90年代はスキラッチ選手(94~97年在籍)で11得点、決定力が群を抜いていました。ダービー通算最多得点は磐田の中山雅史選手(94~2009年在籍)で14点、まさにダービー男だよね。清水の「ダービー男」はチョ・ジェジン選手(2004〜07年在籍)かな。通算5得点、勝負強さが光っていました。
岡村 チョ・ジェジン選手は07年、私のダービー初実況の試合で得点を決めたのでとても印象に残っています。試合終了間際のダイビングヘッドでした。
山﨑 サポーターにとってもダービーは特別なんでしょうね。
大石 取材で清水の練習場へ行くと、サポーターが用意した横断幕が掲げられているんだけど、あるダービーでは「狙うは磐田の首一つ」と書かれていたんだよね。サポーターのこの一戦にかける想いの強さを感じたね。
岡村 確かにダービーの時の横断幕は普段の何倍もの数がありましたよね。練習場の壁を横断幕がぐるっと1周埋めるくらい。
山﨑 試合当日もサポーターの熱量はすごいんでしょうね。
岡村 今回(26日)はエコパが会場。コロナ禍で満席とはいかないでしょうが、01年5月のエコパこけら落としのダービーはすごかった。52959人のサポーターが詰めかけて壮観だったなあ。またそういうダービーが見たいですね。
大石 ダービーは応援も魂を感じるよね。清水はサンバのリズムに乗った応援でスタジアムの空気を変えていくし、磐田もチャントで応戦し選手の背中を押しているね、取材に来た他県のアナウンサーがスタジアムの雰囲気にびっくりしていたからね。
略歴
大石岳志(おおいし・たけし) 1984年に静岡放送入社。長年、テレビ、ラジオのスポーツ実況で活躍する「レジェンド」アナ。1996年のラジオでの伊藤圭介アナとの静岡ダービーダブル実況で「JRN・JNNアノンシスト賞」最優秀賞受賞。
岡村久則(おかむら・ひさのり) 1998年に静岡放送入社。サッカー、野球、陸上などで豊富な実況経験を有する。趣味は息子と遊ぶこと。テレビのJリーグ実況で「JRN・JNNアノンシスト賞」優秀賞を2回獲得。
山﨑加奈(やまざき・かな) 2019年に静岡放送入社。スポーツ大好き、SBSテレビ「みなスポ」(土曜午後5時)など担当。高校時代ソフトボール部で4番サード。
※静岡ダービーSBSアナウンサー対談 ㊥は23日、㊦は24日に本サイト「あなたの静岡新聞」に掲載予定です。
※23日の静岡新聞朝刊に対談のダイジェストを掲載予定です。こちらもぜひご覧ください。