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テーマ : 富士宮市

盛り土の規制強化へ 不正の芽摘む監視に力【22年度静岡県予算検証㊤】

 富士山麓に位置する富士市桑崎。木々が生い茂る市道沿いに、見上げるほど積み上げられた盛り土が突如現れる。道を挟んだ向かいには、木を切り平らに造成した土地に重機2台が止められている。「警告 無許可での土砂の埋立等は条例で禁止されています」―。同市が設置した立て看板が現場の状況を物語る。

無許可で盛り土が行われているとして富士市が警告している現場=12日、同市桑崎
無許可で盛り土が行われているとして富士市が警告している現場=12日、同市桑崎
盛り土規制強化の関連事業費
盛り土規制強化の関連事業費
無許可で盛り土が行われているとして富士市が警告している現場=12日、同市桑崎
盛り土規制強化の関連事業費

 「県外の業者が無許可で数年前から運び込んでいる」。市土地対策課の増田圭佑主査は説明する。積み上げられた盛り土は高さ二十数メートル、土砂の推定量は6万立方メートル。熱海の土石流の原因とされる盛り土量約5万6千立方メートルを超える規模だ。市によると、市内には無許可の盛り土が計23カ所ある。市条例に基づき再三行政指導や中止命令を行ったが、大半が現時点で応じていないという。
 富士市や富士宮市など富士山麓の市町は長らく、違法な盛り土や不法投棄に悩まされてきた。県より厳しい規制条例を独自に制定し対策を取ってきたが、「規制や罰則が緩い市町が狙われ、自治体単位では限界がある」(富士市)のが実情だ。
 静岡県は熱海市伊豆山での土石流を受け、2022年度当初予算案に盛り土規制の関連事業費9400万円を計上した。盛り土対策課を新設し、パトロールや監視カメラの設置を行い、違法な盛り土の早期発見につなげる。7月の施行を目指し、盛り土に特化した規制条例も制定する。従来の届け出制から許可制に変え、権限も市町から県に移す。
 悪質な業者に最前線で対峙(たいじ)する市町は、県の動きに一定の評価をしつつ、課題も指摘する。県条例案では、盛り土の土壌の定期的な環境調査を事業者に求めた。増田主査は「悪質な業者はそもそも従わない。善良な業者の負担だけが重くならないようにしなければいけない」と語る。
 県建設業協会によると、残土処分場は慢性的に不足している。杉保聡正専務理事は規制強化に歓迎しながらも「適正処理の要請で残土処分場の需要が高まり、処分費用の価格高騰につながることが想定される。影響を受ける業者も出てくる」と話す。
 県土地対策課の上原啓克課長は「規制を強化すれば十分とは考えていない。市町と連携し不正の芽が大きくならないうちに摘み取り違法な盛り土を一掃したい」と強調する。
      ◇
 県が10日発表した22年度当初予算案は、新型コロナウイルス感染症への対応がかさみ、過去最大規模となった。県はコロナ対策に万全を期しつつ、コロナ後を見据えた予算を編成。熱海市伊豆山で発生した土石流災害を契機とした盛り土の危機管理、経済活動の鍵を握る脱炭素、学校だけに頼らない教育の在り方など、コロナ収束後も県の重要課題となる施策を検証した。

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