特集 : 浜松市

遠州育ちモデル×遠州織物 まとう故郷の技 當間ローズさん/イシヅカユウさん

 遠州地域は、三河(愛知)や泉州(大阪)とともに国内の三大綿織物産地。高い技術力で生産される多種多様な生地は、海外の有名ブランドからも支持される。遠州織物で仕立てた着物を、遠州育ちのモデル當間ローズさん(28)=湖西市出身=、イシヅカユウさん(30)=浜松市北区出身=が体験した。自分らしさを強みに活躍の幅を広げる2人に、大切にしていることや目標を聞いた。

當間ローズさん(左)とイシヅカユウさん=2021年12月下旬、浜松市中区の榎本ショールーム
當間ローズさん(左)とイシヅカユウさん=2021年12月下旬、浜松市中区の榎本ショールーム
當間ローズさん
當間ローズさん
イシヅカユウさん
イシヅカユウさん
當間ローズさん(左)とイシヅカユウさん=2021年12月下旬、浜松市中区の榎本ショールーム
當間ローズさん
イシヅカユウさん


 

當間ローズさん Rose Touma



 ■たくさんの「普通」知って
 當間ローズさんはリファインデニムの着物を身に着け、3層に織り上げた遠州ガーゼのストールを首元に巻いた。
     ◆
 デニムは生地が厚めで本来は着物に向いていないけど、これは薄くて体にフィットして心地よい。ストールは肌触りがすごく良くて一年中使えそうです。着物が好きで仕立てることもあります。幼い頃、自分が日本人なのか、ブラジル人なのか悩み、文化に触れることで自分の芯のようなものを確かめられるのではと思ったのが入り口です。着物を着ている自分が好きです。
 5歳でブラジルから湖西市に来ました。県西部にはブラジル人学校もありますが、文化や言葉を学んでほしいとの両親の願いで日本の学校に通いました。最初に覚えた日本語は「仲間に入れて」。唯一の友達がテレビで、アーティストや俳優に憧れました。自分もそうなれば認めてもらえるのではないかとの思いが、今の仕事につながっています。
 夢は日本とブラジルの懸け橋になること。幼い頃につらい思いをしたから、同じ思いをする子が出てほしくない。僕は自分のルーツや文化を周りに伝え、受け入れてもらえたから乗り越えられた。知らないから「変だ」とか「嫌だ」と感じるのでは。だから両国の文化をもっと伝えたい。
 大切にしている言葉があります。「たくさんの普通を知ること」。自分にとっての普通は必ずしも相手にとってそうじゃない。相手の普通を知れば、自分の考え方や幅が広がると思っています。
 同じ境遇の子どもたちに伝えたいのは、最初から二つの文化という恵まれた環境にいるということ。違う文化を持った子が周りにいるのは、日本人にとってもチャンス。いろいろな当たり前や普通を知ることで考え方が広がります。自分のマインドを日本だけでなく世界に広げることは、夢に近づける一歩になるんじゃないかな。
 

イシヅカユウさん Yu Ishizuka


 ■属性にとらわれず生きる
 イシヅカユウさんは洋服にも使われるジャカード織の赤い着物を選んだ。生地は立体的なレース柄が特徴。私物のブラウスや革手袋を合わせた。
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 洋服地を着物にしていて着心地が想像つかなかったけど、とても軽くて着心地が良い。洋服の延長線上で着られるような感じで、すごく面白いです。着物や服が好きなので、遠州綿紬[つむぎ]や、他にも洋服地を多く作っていることは知っていましたが、まさか融合しているとは思いませんでした。遠州の織物の多様さを感じました。
 幼い頃は服に縛られていたというか、中学の学ランとか自分の本意でないものを着ることにとても抵抗感があってつらかった。逆に自分を解放してくれたのも同じ洋服で、着る物にはいろいろな力があると思っています。
 トランスジェンダー(TG)女性であることはわざわざ言う必要はないし、活動が狭まる可能性もあります。公表しているのは、幼い3人のおいっ子やめいっ子たちが、少しでも生きやすい世の中になればという願いがあります。私が高校生の頃はちょうどパリコレでTG女性が活躍し始めた時でした。その姿にすごく励まされて、今がある。自分のことも誰かがそういう風に思ってくれたらうれしいです。
 昨年はTGというアイデンティティーがクローズアップされ良かったと思う一方、もっとそこにとらわれない活動ができるように頑張っていきたいです。それは多くの人にとって理想的だとも思います。私はTGということだけを背負って活動したいと思いませんし、私がそうなったらいろいろな人が自分のジェンダーや属性を背負わなければならない一つの例になり得てしまう。TGであることは、とてもたくさんある自分の属性の一つに過ぎないのです。

 ■多様性に富む生地
 岡山ならデニム、今治はタオル-。全国各地の綿織物産地には代表的な素材がある一方、遠州は多様性に富むのが特徴だ。遠州織物は県西部で作られた織物全般を指し、決まった織り方や生地はない。県繊維協会の浅山肇専務理事(65)は「シャツやコートなどの洋服生地に限らず、着物やゆかた、さらにはシートベルトなどの細い生地もある。他産地では織れない生地も、遠州に来れば作れると言われる」と胸を張る。
 遠州産の生地を中心に若い世代にも人気の着物を手掛ける榎本(浜松市中区)の本間康成開発部長(58)は、多様性が生まれた背景を「紡績関連の下請けから始まった企業もあり、他にないものを作ろうという独立心や工夫の精神が強い。天竜川の水に恵まれたことや、東京や大阪へ売るための便が良かったのも一因ではないか」と分析する。

 とうま・ろーず 歌手、モデル。1993年、ブラジル生まれの日系ブラジル人3世。5歳から高校卒業まで湖西市で過ごした。同市ふるさと大使。2020年、恋愛リアリティー番組「バチェロレッテ・ジャパン」出演。21年は東京五輪聖火リレーの県内第1走者を務めた。
 (浜松総局・土屋咲花、中井公一)


 いしづか・ゆう モデル、俳優。1991年生まれ、浜松市北区細江町出身。雑誌やCMで幅広く活動する。2021年、出生時の性と自認する性が異なるトランスジェンダー女性が主人公の映画「片袖の魚」で映画初主演。日本初となる当事者のオーディションで選ばれた。

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