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セクハラ被害、女性議員3割強【静岡県議、市町議員アンケート㊦】

 女性の政治参画の必要性が指摘され、候補者数の男女均等化を目指す法律が施行される中でも、なかなか増えない女性議員。身近な県議会や市町議会でも、少数派にとどまっています。今回も引き続き、県議会と市町議会の女性議員を対象に実施したアンケートから背景を考えます。アンケートは2021年11月下旬、県議会と市町議会の全女性議員118人を対象に実施し、98人の回答を得ました。実名で回答してもらい、結果公表時の表記は希望に添いました。

セクハラを受けた経験(アンケートより) 街頭演説
セクハラを受けた経験(アンケートより) 街頭演説
セクハラを受けた経験(アンケートより) 一般質問
セクハラを受けた経験(アンケートより) 一般質問
活動の成果(アンケートより) 庁舎内
活動の成果(アンケートより) 庁舎内
セクハラを受けた経験
セクハラを受けた経験
セクハラを受けた経験(アンケートより) 街頭演説
セクハラを受けた経験(アンケートより) 一般質問
活動の成果(アンケートより) 庁舎内
セクハラを受けた経験


 

Q.セクハラを受けた経験は

 

 ■「実際に抗議」は少数派
 女性の政治参画を進める上での障壁の一つとされるセクハラ。2021年6月改正の「政治分野における男女共同参画推進法」が政党や国、地方自治体に防止策を義務づける中、アンケートでは立候補に向けた準備や選挙運動、議員活動の中でセクハラを受けた経験が「ある」と答えた人が32.7%に上った。
 セクハラの内容を聞いた自由記述では、同僚の男性議員や支援者から、飲み会の席などで性的な言葉を掛けられた、体を触られたといった訴えが寄せられた。「男性議員同士で聞こえよがしに性的な会話をされる」(県東部、50代市議)とした体験談もあった。
 県西部の60代市議は4年ほど前、議会運営委員会で議員の休職規定に産休の扱いを明記すべきと発言したところ、同僚の男性議員から「出産予定か?」と書かれたメモを回された。別の議員は、子育て支援に関する一般質問中、「自分自身が少子化対策すべき」とやじを浴びたという。
 選挙中に有権者から体を触られる、つきまとわれるといったいわゆる「票ハラ」被害も。「街頭演説で抱きつかれた」(県西部、50代市議)、「何でも言うことを聞けば票を入れてあげると言われた」(匿名)などの経験がつづられた。
 セクハラ行為を受けた時の対処法としては「相手にしない」「適当にあしらう」などの回答が多く、表立って抗議したり、訴え出たりした人は少数派だった。有権者からつきまとい行為を受けたケースで、警察などに相談し、個人情報の公開を控えた経験のある人がいた。
 一方で、セクハラを受けた経験が「ない」とした人は61.2%だった。また「その他」(6.1%)を選んだ人では、「選挙のためにある程度仕方ない」「当人にはそのつもりがない」(ともに匿名)などと、あえて「ある」としない回答も目立った。

 

Q.他のハラスメントは

 

 セクハラ以外のハラスメント経験については、「ある」とした人が39.8%でセクハラより多かった。内容を尋ねると、特に議員初期の経験として、同僚議員からのパワハラ、モラハラ(モラルハラスメント=倫理や道徳に反した嫌がらせ)の訴えがあった。
 「発言を冷笑され、勉強不足と頭ごなしに怒鳴られた」(県東部、50代市議)、「女性に財政の話は通じないと言われた」(匿名)などの例のほか、「女性と見て支配的な立場に立とうとする同僚がいる。明確なハラスメントではないので訴えにくい」(匿名)との声もあった。
 議会以外でのハラスメントの訴えでは、「地域の有力者の意に反すると怒鳴られる」「地域や組織の会合で意見を言わせてもらえない」(ともに匿名)などの記述があった。
 一方で、セクハラ以外のハラスメントを受けた経験が「ない」と回答した人は57.1%だった。

 ■女性増加による変化 党派超え課題解決に連携
 女性議員の割合が比較的高い議会では、どんな変化が起きているのか。伊豆の国、掛川、浜松市などでは、女性議員が党派を超えて連携し、女性に身近な行政課題の解決を図る動きがある。
 現在12人の女性議員がいる浜松市では、市に対し連携して行った要望で、市民も利用する庁舎内のトイレや授乳室が改修されたという。伊豆の国市でも昨年12月、党派を超えた6人が連名で市に要望書を提出している。
 浜松市では現職で結婚や妊娠出産を経験する女性議員もいて、同市の小黒啓子市議(69)は「女性の人数が増えたことで所属会派などの認識が変化し、理解を得やすくなっている」と感じている。

 ■人材発掘への取り組み
 県内では女性市町議員の有志が結成した「なないろの風」が、女性議員を増やすための啓発、支援活動や、女性議員の資質向上に取り組む。個人やグループで人材発掘に努め、選挙資金の支援を行う動きもある。
 ただ、「自然に任せていては女性議員は増えない」(県東部、50代市議)、「女性が極端に少ない現状では、半ば強制的な起用も必要」(県東部、60代市議)などと、クオータ制などの積極策を求める声も目立った。
 また、ジェンダー平等の遅れなど「社会全体の環境が整っていない」(匿名)との見方は強い。三島市の野村諒子市議(69)は「国や自治体の男女共同参画事業は、女性の社会参加から一歩進め、女性の政治参加に踏み込むべき」と訴える。「女性に限らず若い人が政治に無関心」「世代間のバランスがより大事」(ともに匿名)として、若い世代への働き掛けを重視する人もいた。

 

Q.関心の強いテーマは

 

 子育て、教育… 問題意識高く
 女性議員が増えることで、期待できる変化は何か。議員として特に関心を持って取り組んでいるテーマについて聞いたところ、「子育て」「教育」がそれぞれ56.1%と50%(複数回答)で突出した。「医療福祉」(40.8%)と「防災」(32.7%)が次いで多く、生活に密着した課題への関心の高さがうかがえた。
 具体的な議員活動の成果としては、女性に配慮した防災備蓄品の見直し▽出産や子育て環境の整備▽不妊治療支援▽子どもの発達支援-などの施策推進が挙がった。「子育てや介護などの実態が分かり、現状に則した提言ができる」「ソフト面強化の時代、女性目線の市民サービス向上はより重要」(ともに匿名)などと役割を自負する声があった。
 女性議員が少ないことの弊害についての自由記述では、女性に関わる行政課題への理解不足や発言力の不足などのほか、「地域に女性のリーダー的存在がいないと、お茶出し、炊き出しなど地域の女性の役割も変わらない」(匿名)との指摘もあった。
 「働き方のロールモデルがいない」(匿名)ことを悩む議員もあり、「夜の会合は極力選別し、2次会は行かない。一人働き方改革をしている」と苦労をにじませた。
 また、議会の現状として、女性議員の役職登用の遅れや常任委員会への配置の偏りに加え、議会に対応する行政の幹部職員に女性が少ないことを課題とする意見も複数あった。(西條朋子、伊豆田有希、大滝麻衣)

 アンケートでは、女性議員の皆さんの経験や現状から、女性の政治参画のさまざまな課題が示されました。こち女では今後、これらの課題についてさらに取材し、考えます。情報やご意見をメール<women@shizushin.com>やLINEでお待ちしています。LINEは公式アカウント「静岡新聞こち女」を登録後、メッセージをお送りください。


 

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