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ZOO(静岡市葵区)伏見陽介さん 百人百様の味わい 飲み比べ楽しんで【しずおかクラフトビール新世代⑲】

 自他共に認める、静岡のクラフトビールの「伝道師」だ。2021年春に自らの会社「ZOO」を立ち上げ、11月末に生ビールの有料試飲ができる酒販店「MUGI」をオープンした伏見陽介さん(27)=静岡市葵区=。「市内のどんな居酒屋にも県内の醸造所のビールが常時置かれている。そんな状況を目指す」と理想を掲げる。

国内外のビールを陳列する冷蔵庫からお気に入りを取り出す伏見陽介さん=12月上旬、静岡市葵区のMUGI
国内外のビールを陳列する冷蔵庫からお気に入りを取り出す伏見陽介さん=12月上旬、静岡市葵区のMUGI
ひと粒の麦(左)とOffTrail ホップス・ アンド・ドリームス
ひと粒の麦(左)とOffTrail ホップス・ アンド・ドリームス
国内外のビールを陳列する冷蔵庫からお気に入りを取り出す伏見陽介さん=12月上旬、静岡市葵区のMUGI
ひと粒の麦(左)とOffTrail ホップス・ アンド・ドリームス

 17年に同市内のクラフトビール店を紹介した「静岡クラフトビアマップ」を発刊し、名をあげた。19年には全県版を12万部発行。18年からは清水区で秋に開かれる「静岡地ビールまつり」の企画も担当する。セミナーや講座の講師としてもおなじみだ。本県のクラフトビールファン増と、各醸造所のブランド向上への貢献は計り知れない。
 静岡浅間通り商店街の近隣で生まれ育った。14年、自宅から徒歩1分の場所に建つ古いしょうゆ蔵が醸造所に生まれ変わった。同市初のクラフトビールメーカー「アオイビール」。静岡大理学部の学生だった伏見さんは醸造所に隣接するバーに足しげく通い、多種多様なスタイルがあるクラフトビールの世界に魅了された。「衝撃的だったのはヴァイツェン。濁っていて、果実は入っていないのに味、香りはバナナそのもの。酵母の仕事と聞いて、感動した」
 学生時代は同醸造所系列のビアバーでアルバイトし、時には醸造所を手伝った。「ビール醸造は日本酒やワインのような大規模な設備を必要としない。周辺で米やブドウなどの農作物が採れなくてもいい。世界中、どこでもつくれるのが強み」
 大学卒業直前にベルギー、ドイツなど4カ国の16醸造所を巡り、製法をつぶさに見てきた。醸造家の数だけビールがある。飲み比べの面白さを、みんなに知ってほしい。帰国後にずっと抱えていた思いがその年の末、マップに結実した。県内企業に就職してからも、ビールの普及活動を続けた。人脈を広げ、今春の独立につなげた。
 県内のクラフトビールの需要は今後も高まるとみる。「特に静岡市は駅からの徒歩圏のビアバーが、全国の都市で最多。まだまだ増える」。自然酵母を使い、たるで熟成するビール「ランビック」に憧れる。「完成までに数年かかる特別なビール。いつか自分で手掛けたい」

 ■ひと粒の麦 
 ■OffTrail ホップス・アンド・ドリームス

 MUGI開店に合わせ、沼津市の柿田川ブリューイングで伏見さんが手掛けたハウスビール「ひと粒の麦」は英国のパブで飲まれているスタイルを目指したエール。アルコール度4%で飲みやすい。
 山梨県小菅村のファーイーストブルーイングの「OffTrail(オフトレイル)」シリーズはMUGIの一押し。ビール酵母以外の酵母で発酵させ、出来上がったビールをたる熟成する。「ホップス・アンド・ドリームス」は桃やバナナの香りが漂い、口に入れると複雑な酸味とトロピカルフルーツのような味わいが広がる。

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