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テーマ : 函南町

函南メガソーラー条例 適用巡り割れる見解 事業「起点」施行前か後か【解説・主張しずおか】

 民間企業が進める函南町軽井沢の大規模太陽光発電所(メガソーラー)建設事業で、設備の設置を規制する町条例の適用を巡り町と一部住民の見解が食い違っている。論点は事業の起点が条例施行の前か、後か。建設反対の立場は同じだが、施行前に動きだした当初計画への適用に難色を示す町に対し、条例を改定して全面適用を求める住民の動きも出始めた。

函南メガソーラー条例を巡る動き
函南メガソーラー条例を巡る動き


 条例が適用されると、業者は町長の同意なしに設備の設置が禁じられる。電力の固定買い取り制度(FIT)は法令順守を前提とし、業者が条例に違反すれば経済産業省から認可を取り消されかねない。町は事業への「不同意」を示しているため、条例適用が事業の阻止につながるとの見方は強い。
 ただ、問題になるのが事業の「起点」と条例の「施行日」。同条例は2019年10月に施行されたが、業者は既に林地開発の許可申請を県に済ませていた。申請を事業の起点とみる町は当初計画への「遡及(そきゅう)適用は困難」とし、今年8月に業者が届けた計画の変更部分にのみ条例を適用した。
 これに対し、一部の住民グループは条例改定により同事業の起点を「申請手続き」ではなく「工事の着手」に変え、今も着工していない事業全体への適用を求める。有権者の1割を超える3540人の署名を町選管に提出し、条例改定を町に直接請求する構えだ。
 このほか、現条例は対象事業を「町内での設備設置、発電」と定めており、「設置工事は始まっていない。今のまま全面適用できる」との声も上がる。
 他方、三重県紀伊長島町(現紀北町)の産業廃棄物処理施設を巡る最高裁判例(2004年)では、県に対して施設の設置許可を申請する業者の動きを知りながら、規制条例を制定して一方的に事業を禁止した町の違法性を認めた。業者と十分な協議を尽くした上で適正に指導し、業者の地位を不当に害することのないよう配慮する義務が町にあったとしている。
 行政法などを専門とする県立大経営情報学部の小西敦教授は、同訴訟が最高裁と高裁で判決が分かれる“難問”とした上で、「一般論として、特定の事業を狙った条例制定や改定には慎重な対応が行政に求められる」と指摘する。
 函南町の事業は防災上の危険や景観の阻害など住民の不安が大きく、町はこれら公益性を踏まえた難しい判断を迫られている。

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