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静岡大学の付属中学校にも給食がほしい! 寄せられた声に対し、大学側は…【給食のいま@しずおか②】

弁当作りに追われる保護者のイラスト。栄養面、安全面、手間など、さまざまな理由から、弁当でなく給食を求める声がある
弁当作りに追われる保護者のイラスト。栄養面、安全面、手間など、さまざまな理由から、弁当でなく給食を求める声がある

 「静岡大付属島田中も給食がありません。成長期を支える食。お弁当は家庭の事情や好き嫌いで偏りが出る。食中毒も心配」(40代、女性)
 「静岡大付属浜松中学も弁当持参です。朝も早いので給食にして欲しいです!切実です。『だったら受験しなけりゃ』と世間には言われそうですが、子どもの学力と経済的事情を考えるとこの学校がベストだと思いました。個人を特定されると困るので学校にも言えません」(匿名希望)


 「県立中学校でも給食が食べたい」の記事やその後の給食アンケートに対し、静岡大付属中学校に通う生徒の保護者から声が寄せられた。同大付属の浜松、島田、静岡の3中学校はいずれも弁当持参が原則。牛乳のみ提供する「ミルク給食」を希望制で行っている。

 文部科学省の2018年の学校給食実施状況等調査によると、県内の公立中学校263校のうち、258校(98・1%)が完全給食だ。同じ公立学校なのに、なぜ静岡大付属中学校は、市町立中学とは違って完全給食でないのか。
  photo01 早い日は午前6時前に弁当を作り終えなければならない(投稿者)
 静岡大に問い合わせた。食育の重要性の他、学校給食法4条「義務教育諸学校の設置者は、当該義務教育諸学校において学校給食が実施されるように努めなければならない」を挙げて、「付属中学校においても学校給食が実施されることが望ましい」との見解を示しながらも、「静岡大学全体の予算の中で付属学校の予算は限られており、ただちに中学校で給食を実施するための設備を整えるのは難しいのが現状」と回答した。

 学校給食は学校の設置者が実施する。市町立学校は給食施設、設備、調理職員の雇用などを市町の予算を使ってできるため、保護者は食材費のみを負担すれば良く、安価に給食を提供できるという。

 一方、静岡大付属中学校の設置者は国立大学法人静岡大学。現在、給食設備がない3中学校で給食を提供するには、設備の新設、調理スタッフの人件費などが必要になる。これらは文部科学省から得られた予算、法人の予算、保護者やOBらの寄付金などでまかなう必要があるが、そこまでの余裕がないのが現状という。

 浜松、静岡の付属2中学校は併設の付属小学校に給食設備がある。県教委によると、「何食分作るには何平方メートル以上の設備が必要」というような食数と設備規模を具体的に示す基準はないという。それならば、小学校の給食室で中学校分の給食も作ることはできないのだろうか。疑問が湧く。

 これに対して同大は「仮に小学校の給食設備を使って中学生分の給食を作ることができたとしても、学校給食衛生管理基準に基づいて中学校へ衛生的に給食を運ぶため、専用の運搬車両などの設備や人員を確保しなければならない」と回答した。
  photo01 前日の夕飯の残り物をアレンジして弁当のおかずにする(投稿者)
 仮に整備費などを確保する場合、どのような工面が考えられるのだろうか。文部科学省国立大学法人支援課に尋ねたところ、毎年度交付される使途に制限のない運営費交付金から捻出したり、使途に応じた補助金を申請したりすることが、手段として考えられるとの回答だった。ただ、当然ながら「財源は限られているので、必ず補助金が出るとは言い切れない」(同課)。ちなみに、静岡小・中学校は「周知の埋蔵文化財包蔵地」にあり、市文化財課によると工事などの際は市に届け出が必要だが、遺跡がないことが分かっていたり、調査を行ったりすれば「工事が全くできないということはない」という。

 県外の大学付属中学校では給食を実施する学校もある。ハードルは低くはないものの、給食実施は全く不可能ということではなさそうだ。ところで浜松中学校では、弁当持参が難しい生徒のために委託業者の弁当注文を行っているという。これは静岡、島田の2中学校ではできないのか。同大に尋ねると、「現時点では保護者からの要望はない。今後、保護者からのある程度まとまった要望があり、価格面や発注依頼などで適切に運営できる業者があれば、検討していきたい」とのことだった。

 投稿者のように個人の特定を恐れて声を上げられない生徒、保護者もいるかもしれない。静岡大学ホームページの投稿フォームからは、匿名で意見や要望を伝えることができる。

■給食室新設、オーガニック弁当… 全国の付属中学、工夫さまざま
 文部科学省の2018年の学校給食実施状況の調査によると、国立大学付属中学が含まれる全国の国立中学71校のうち完全給食実施校は15校。静岡大学付属中学のように、完全給食がない学校の方が多いようだ。ただ近年は、より良い昼食環境のために工夫を凝らす動きもみられる。
  photo01 オーガニック弁当。温かく、安心で、おいしいと評判だという
 中高一貫の東京大学教育学部付属中等教育学校は弁当持参が原則だが、2020年度から無添加調味料とオーガニック食材を使った弁当のウェブ注文システムを導入した。

 同校によると、保護者からは弁当作りの負担を訴える声が毎年届いていた。一方で、学校給食の食品添加物や食物アレルギーへの不安を理由に「給食がないからこの学校を選んだ」という声もあった。給食室新設は財政的に難しかったが、こうした多様な声に応えるため、近所の商店街の店舗の協力を得て注文システム導入が決まったという。

 1食600円超と安価ではないが、毎日30食ほど注文があり、「温かい」「おいしくて安心安全」「登録さえ済ませておけば、朝7時までの注文でお昼にホカホカが届くので、万一の寝坊や炊飯器のセット忘れにも対応できる」と好評という。
  photo01 琉球大付属学校のための新給食棟
 琉球大学も2020年、付属中学を含む付属学校のために新給食棟を建設した。同大広報によると、「市町村の給食センターが管轄外であり、義務教育課程における給食提供の重要性に鑑み、琉球大学の予算から捻出した」という。 

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