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社説(12月20日)清水港の機能強化 活性化好循環の起点に

 静岡市の清水港で、新興津埠頭[ふとう]の岸壁を200メートル延伸して900メートルにする工事が始まった。船の大型化に対応し、水深15メートルにしゅんせつする。
 現在はコンテナ船またはパルプ運搬船の計2隻が横付けするが、2025年度に完工すると、コンテナ船2隻と大型化が進むパルプ運搬船1隻の計3隻が同時着岸できるようになる。「沖待ち」と呼ばれる混雑の改善や、コンテナとパルプの作業動線交錯の解消など、荷役の効率化による機能拡充が見込まれる。
 静岡県は今年3月に改定した港湾計画で、おおむね10年後には興津、新興津を一体化して大型船4隻が同時着岸できる多目的国際貨物ターミナルを目指すとした。港湾の機能強化が経済活性化の好循環の起点になるよう、官民一体で「稼ぐ力」を高めてほしい。
 今年8月には中部横断自動車道が全線開通した。港周辺では、国道1号静清バイパスの立体化や、清水いはらインターチェンジに接続する県道清水富士宮線のバイパス化工事も進む。
 清水港の港湾区域は全国23の主要港湾で最小だが、コンテナ取扱量は全国8位。20年の貿易額は2兆5900億円で全国10位だった。東京湾、伊勢湾、大阪湾以外の港で唯一、北米航路と欧州航路が就航している強みもある。
 興津、新興津地区は1960年代以降、順次埋め立てられ、2003年にはコンテナターミナルが供用開始。13年の岸壁延伸を経てコンテナ取扱量は約20年間で4倍に増えた。
 近年は高速道路網を生かし、静岡県産ミカンや長野産白菜、山梨産白桃など、高品質の農産物のアジア向け輸出拠点として新機能が加わりつつある。
 清水港の活性化には、物流、産業分野と併せ、にぎわいの場として市民や来訪者に親しまれる港づくりが欠かせない。クルーズ船寄港数は19年に40回で全国17位。富士山の眺望を筆頭に、清水港の持ち味の伸びしろは大きい。
 港湾管理者は静岡県だが、今回の岸壁延伸のような国際物流に関する工事は、今年開設100周年の国土交通省中部地方整備局清水港湾事務所が行う。港を生かした街づくりやにぎわい創出は主に静岡市が所管する。
 機能拡充には国、県、市の緊密な連携が欠かせない。静岡市が08年に策定した「清水港ビジョン」は開港120周年(19年)を機に市、県、地元関係企業が結集し、静岡商工会議所が加わった「清水みなとまちづくり公民連携協議会」のグランドデザインに引き継がれた。未来への事業を着々と進めるとともに、歴史文化にも光を当て、誇れる港を次代に継承したい。

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