子の国外連れ去り防げ ハーグ条約巡り、静岡県内自治体にも周知

(2018/9/25 07:41)
外務省が開催したハーグ条約への周知を促す講演会。深刻な問題を抱える参加者もいた=8月下旬、浜松市中区

 国境を越えて連れ去られた子どもの取り扱いを定めた「ハーグ条約」を巡って米国が5月、日本を同条約に基づく義務の「不履行国」に初めて認定したことを受け、国際的な条約順守を求める声が高まっている。問題の根本的な解決には子どもを不幸にする不法な連れ去りを未然に防ぐ必要があり、外務省は在留外国人への周知と相談体制の強化に取り組む。外国人が多い浜松市をはじめ本県内でも、同省は「深刻な問題を抱える人は潜在的に存在する」とみて、自治体にも協力を呼び掛けている。
 「ブラジルに帰国した時、現地にいる元夫が子ども2人を留置した。取り戻すためにはどうすればいい」。同省が8月下旬に浜松市で開いたハーグ条約の周知を促す講演会の質疑でブラジル人女性が悲痛な声を上げた。同省職員は子どもが現地でなじんでしまうことを理由に、原則1年以内でなければ連れ戻すのは困難との認識を示した。その上で、条約に基づく面会手続きを勧めた。
 日本が条約に加盟して4年半。子どもの返還申請は180件(8月1日現在)で、日本・ブラジル間では9件にとどまる。同省領事局ハーグ条約室の図師執二室長は「ハーグ条約が適用される事案は実際に地域で発生している。家族を不幸にする安易な連れ去りを未然に防ぐことが大切で、条約の周知と自治体の協力も重要」と訴える。
 条約などによると、同省が返還援助を決定次第、市町村などが協力して子どもを捜し出すとしているが、自治体職員の条約への理解や問題の認識不足も課題とされる。浜松市によると、現時点で子どもの連れ去りに関する同市の対策などはなく、関係部署での理解が深まっているとは言えない。
 外務省の講演会を通じた条約周知の取り組みは、外国人だけでなく自治体職員に理解を促す効果もあった。浜松市国際課の担当者は「これまで条約は身近なものではなかったが、講演会をきっかけに連れ去りを現実問題として認識できた」と話す。市子育て支援課の職員も「家庭で困っている外国人らを相談窓口につなぐなどできることから取り組みたい」と意識を高める。

 <メモ>ハーグ条約 正式名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」。国際結婚の破綻による離婚件数に比例し、一方の親が国境を越えて子どもを連れ去るケースが増加。子どもが不利益を受けないよう国際ルールを定めた。1983年に発効し、日本は2014年4月に加盟した。
 加盟国は現在98カ国で、不法に連れ去られた子どもの返還や親子の面会交流の支援が義務付けられる。対象は16歳未満の子ども。子どもが元々住んでいた国と連れ去られた国の両方が締結国であれば、条約に基づく返還請求が可能。日本では外務省が「中央当局」として、返還申請を受け付けている。

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