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「山の遊び」/子育てコラム「あすなろ」

 先日、静岡市の中山間地のママグループの交流会に、取材も兼ねて娘(3)と参加しました。知らない子どもの輪に入った娘は人見知りを爆発させ、誰もやらない片付けに一人取り組むなどして必死に居場所をつくっていましたが、年上の子たちが声を掛けてくれたお陰で、終盤には輪の中には居られる状態になっていました。会が終わったので帰ろうかと促すと、娘は「おままごとしたい」と言いました。外に残っている子たちと遊びたいようでした。
 会場になった公民館の外には鈴なりに実をつけた大きな柿の木がありました。下にはさまざまな雑草が繁り、青い露草や紫の野花が咲いていました。娘と私が〝ご飯〟の材料を探していると、一人の女の子が「一緒にやろう」と来ました。娘より少し年上のその子は落ちていた柿を手でつぶすとちょうど良い大きさの葉を摘んで包み、小さな桜餅のような「ゼリー」を作りました。次にさびた金属片をどこかで拾ってくると、大きく厚い柿の葉を器用に切り落とし「これをお皿にしよう」と提案しました。
 触発された娘は色とりどりの花を「お皿」に盛り、女の子が取ってくれた朝顔のタネをふりかけて飾り、柿のへたを「かわいい形!」と箸置きにしました。走り回っていた男の子がのぞきに来て「おいしそう」と言ってくれました。
 用途が決まった道具に頼らない「おままごと」はすごく自由で、私はわくわくしながら見ていました。身を置いた世界を自力で楽しもうとする力は、例えば保育園や小学校の生活でも必要でしょうし、大人になっても試される「生きる力」であるように思います。楽しい遊びを繰り返しながら、その力を養えるって素晴らしいことです。山の子がうらやましい!でも、そんな中山間地も少子化という問題に直面し、ママたちが同年代の遊び相手を探すのに苦労していると聞きます。
 雨の翌日の晴天だったこともあってか、私たちは蚊の餌食になってしまいました。私はずっと目を光らせて「蚊が来てる!」と騒ぎましたが、「刺されてもいいよ」と女の子は何かを作る手を止めずに言いました。ままごとに集中したい本人にとっては、蚊も私の大騒ぎも煩わしいようでした。帰りの車で「あのお姉ちゃんかっこよかったねぇ」と娘が話していて、心頭滅却すれば火もまた涼し、という言葉を思い出しました。

(のびのび)

子育てコラム「あすなろ」(786) 「山の遊び」の巻

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