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視標「関西万博と自然保護」 湿地埋め立てに懸念 渡り鳥の重要生息地 バードライフ・インターナショナル保全ディレクター リチャード・グリメット

 2025年大阪・関西万博の用地整備によって、渡り鳥などの重要な生息地である夢洲の多くが失われることに日本の環境保護団体が懸念を表明している。われわれバードライフ・インターナショナルもその懸念を共有する。

バードライフ・インターナショナル保全ディレクターのリチャード・グリメット氏
バードライフ・インターナショナル保全ディレクターのリチャード・グリメット氏

 大阪湾の夢洲は、オーストラリアから東アジアに至る渡り鳥の飛行ルート上にあり、多くの野鳥の休息地になっている。
 かつて大阪湾や東京湾に存在していたこのような場所のほとんどが開発によって失われ、シギやチドリなどの個体数は世界的に急減している。この飛行ルートは、世界で最も大きな脅威にさらされているとされ、それだけに残された湿地生息地の重要性は高い。
 夢洲では、国際自然保護連合(IUCN)が、近い将来の絶滅の恐れが非常に高いとしているヘラシギや、日本の環境省が絶滅危惧種としているコアジサシなどの生息が確認されている。この地の多くを埋め立てるという現在の計画や終了後の利用によって、この重要な生息地が失われる可能性が非常に高い。
 現在の計画のように人工的構造物を造るのではなく、自然の湿地や干潟を残す計画に変更するべきだ。日本国際博覧会協会や大阪市などの関係者は、専門家や市民団体と共に知恵を絞り、夢洲の環境保全や再生と万博を両立させる道を探るべきだ。
 貴重な湿地の保全と再生は単に野鳥のためだけではない。夢洲を万博後も野鳥観察などの自然体験の場として活用すれば、環境教育やレクリエーションの充実に大きく貢献する。小規模なものであっても、健全な自然の生態系は、防災や漁業資源のかん養、二酸化炭素の吸収など、長期間にわたり豊かな生態系サービスを人々にもたらしてくれる。
 短期的利害にのみ注目し、このような長期的な視点を忘れてはいけない。万博が「持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献」を掲げるならばなおさらだ。
 日本はこれまで、水鳥にとって重要な湿地を守るためのラムサール条約の中で重要な役割を果たし、国際的な渡り鳥の飛行ルートの保全にも大きな貢献をしてきた。残された重要な湿地がさらに失われることで、これまでの日本の国際的な評価が傷つくことを懸念している。
 昨年12月、国連の生物多様性条約の締約国会議は、30年までの新たな目標を含む「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」を採択、30年までに自然破壊の流れを逆転させ回復軌道に乗せることや、陸と海の30%を守ることなどを宣言した。
 夢洲の生態系保全と再生は、日本政府も合意した新枠組みに示された新たな世界目標の達成のための重要な貢献となる。それこそが新枠組み採択後、初めて開かれる万博の貴重な遺産になるだろう。
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 RICHARD・GRIMMETT 1960年、ロンドン生まれ。英イーストアングリア大卒。85年から、英国に本部を置く国際自然保護団体「バードライフ・インターナショナル」で鳥類保全活動に従事、2012年から現職。アジアプログラム代表として02~07年、東京に滞在。

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